ケネス=フィーダ『幻想の古代史』上・下

 福岡洋一訳で、楽工社より2009年11月に刊行されました。古代史・先史時代を中心として、カーディフの事件やピルトダウン事件といった捏造事件や、地球外知的生命体による人類の進化・文化への介入といった珍説が取り上げられ、その知識不足・思考様式が批判されるとともに、そうした捏造事件や珍説が一定以上影響力を有した背景についても指摘されています。本書を読めば、たんに知識が得られるだけではなく、批判的思考の訓練にもなることでしょう。原書の刊行は2008年(6版)です。本書は英語圏でかなり有名な擬似古代史批判本らしく、英語圏では6版まで刊行されており、第1版の刊行は1990年です。

 上記以外の取り上げられている捏造事件・珍説は、ケルト人やギリシア人が紀元前にアメリカ大陸に到達したという説や、エジプト文明外来説や、アトランティスが実在したとする説や、日本の旧石器捏造事件などです。マウントビルダーをめぐる議論など、私がよく知らなかったこともあり、得るところが少なからずありました。とくに印象に残ったのは、地球外知的生命体による人類の進化・文化への介入を主張するフォン=デニケンへの批判です。私は、デニケンの著作を読んだことはありませんが、その亜流的な著作はそれなりに読んできました。そのときにはあまり意識しなかったのですが、デニケンが自説の根拠としている「驚くべき古代史の遺物」には、ヨーロッパのものがひじょうに少なく、それはデニケンのヨーロッパ中心主義のためだろう、と本書では指摘されています。もちろん、これはヨーロッパだけのことではなく、現代ではアフリカなどさまざまな地域で、こうした地域中心主義が見られることが本書では指摘されています。捏造事件・珍説の背景には、しばしばこうした偏見があるようです。


Feder KL.著(2009)、福岡洋一訳『幻想の古代史』上・下(楽工社、原書の刊行は2008年)

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