大河ドラマ『風と雲と虹と』第51回「激闘」

 天慶3年(940年)正月、朝廷は坂東を出る気のない将門には討伐軍を派遣し、都に攻め入る勢いの純友には、従五位下を与えて懐柔しようとしました。将門は、農作業の始まる時期を前に、兵たちをそれぞれの故郷に帰すことにします。これからもお導きください、と言う兵たちにたいして、自分たちの力ですべてやるのだ、と将門は言います。将門は、かつて敗れたとき、蜂起した民人に救われたのだ、他国の者もできるはずだ、と力説します。

 将門が兵を帰したと聞いた藤太は、将門らしいが、そのことがいずれ必ず将門を殺す、と言います。そこへ、藤太に一度は屈辱的な扱いを受け、次には捕らわれかけた貞盛が、常陸(前?)国司の藤原惟幾とその息子の為憲を伴い、再度藤太を訪れます。過去のいきさつにも関わらず、そのことには一切触れず、またしても自分を訪ねてきた貞盛を、藤太は見直します。惟幾と為憲は、一度は都に帰ったのですが、坂東で国司が追放される契機となったのが常陸だっただけに、都で官人として再起するわけにもいかず、朝廷の派遣した将門追討の征東大将軍が坂東に攻め寄せてくる前に坂東に戻ってきて、手柄を立てようとしていたのでした。貞盛が、さりげなく朝廷から将門討伐の大群が派遣されたと語ったことに、鋭い藤太は反応し、惟幾・為憲とも会うことにします。

 征東大将軍に任じられた藤原忠文は、途中の国々で2万人を目標に兵を集めながらやって来る、と惟幾・為憲親子は藤太に報告します。しかし、碓氷峠もしくは足柄峠に来るまで一ヶ月はかかるだろう、と貞盛は言います。それまでには必ず将門に知らせが届き、将門が応戦の準備ができるので、将門が油断している今が好機だ、と惟幾・為憲は力説します。為憲は、このような時に我々と組まなければ、そなたも公にたいする反逆だ、と藤太に言いますが、為憲は藤太に睨まれて沈黙します。征東大将軍率いる大軍と将門が戦えば、坂東では長い戦乱なり、その悲惨な様子が目に浮かぶ、と貞盛は藤太に言います。貞盛は、将門の隆盛を見たが、人々の間にはより強い権威にすがりたいという気持ちが心の底では強いのではないか、打ち続く戦乱になればきっとそうなり、より強い権威とは公だ、と言います。貞盛は、公の実態ではなく、公にたいする、けっして消えてはいない人々の信仰を言っているのだ、と言います。

 藤太は、自分は将門のことが好きなのだ、と言います。貞盛は、それは自分も同じことだ、自分は幼い頃からの将門の友だ、と言います。貞盛は、将門は早く生まれすぎた、いやもっと大昔に生まれていればよかったのかもしれない、と言います。その晩、藤太は寝所で一人熟考し、ついに将門を討つ決意を固め、郎党の佐野八郎を呼び、すぐに集められる兵はどのくらいか、尋ねます。八郎が3000と答えると、4000にしろ、と藤太は言います。藤太は、その目的を八郎に話さず、大至急兵4000を集めるよう厳命します。将門は自分の若い頃そのままのようだ、と藤太はつぶやきます。

 天慶3年(940年)正月末、将門は、純友が都へと近づいている、との報告を受けます。そうした情勢なので、公が坂東に兵を送ることは当分ないだろう、と員経は楽観的です。将門は、一見すると正反対の純友と自分は背中合わせにぴったりといるのではないか、と考えたことがある、と言います。清忠も将門の意見に同意し、将門と純友は確実に近づきつつある、と言いますが、まだ自分には分からない、と言って将門は笑います。そこへ将頼が現れ、藤太が密かに兵を集めている、との噂を将門に報告します。その頃藤太は、密かに集めた兵を厳しく訓練していました。

 京都のある寺では、純友配下の藤原恒利が検非違使別当と密会していました。恒利は純友の心に不安を抱き、純友の動向を別当に語るなど、二股をかけていたのでした。別当は恒利を人臣最高位にある藤原忠平に紹介します。恒利は忠平に会えて賞されたことに感激し、これを恩と考えて忠平に報いることにします。恒利は純友から指示があるとして武蔵・季重を呼びますが、そこには恒利からの報告を受けた検非違使庁の役人が潜んでいました。裏切ったね、と武蔵に問われた恒利は、まだ純友を裏切ると決めたわけではないが、忠平に会えた恩を返そうと思う、と答えます。季重は武蔵を庇って矢に倒れ、武蔵も切りつけられましたが、玄明がなんとか救い出します。

 その頃、純友配下の大海賊船団は淀川河口の大物裏に近づきつつありました。玄明は息も絶え絶えの武蔵を純友の船へと連れてきて、武蔵は純友と再会します。純友の大望を気にする武蔵に、公は倒れた、と純友は取り繕います。純友の大望が成就したと聞いた武蔵は喜び、純友は、自分の妻として生きるのだ、と言いますが、武蔵はついに息を引き取り、純友は武蔵の名を叫び、玄明は涙を流します。玄明からの報告で恒利が裏切ったことに気づいた純友に、仲間に気をつけろとの螻蛄婆の忠告を玄明は伝えます。純友は、公はまだ倒れていないがもうすぐだ、将門が征東大将軍を破って西に攻め寄せてくるまで時間はかからないだろうから、それまでは都をじわじわと攻め、人々の心を公から離すのだ、と純友は力説します。

 天慶3年2月、藤太の動きは将門にもはっきりと分かるようになっていました。将門もすでに兵を700集め、将頼は、まもなく1000になるぞ、と言います。将門は、それでよい、明朝に下野へと向かうぞ、と言います。員経は、藤太が兵4000を集めていることを伝え、もう一日待てば、こちらも兵は2000~3000になるだろう、と郎党たちは言います。興世王も、板東全域より何万という兵を集め、板東の主たる威勢を示して敵の勢いを挫くのが良策だ、と進言します。しかし将門は、待っていては藤太軍が攻め寄せてくる、藤太はこちらの準備が整うのを待つほどの戦下手ではなかろう、と言って郎党たちの進言を退けます。将門は、こちらから攻め入るのが勝利の道だと言い、郎党たちも将門に従います。将門は、これまでも見方の数倍の敵を打ち破ってきたのだから、任せてくれ、と笑顔で言います。郎党たちの様子は明るく、将門は、これ以上の加勢はいらない、安心して働くようにと民人に伝えるよう、老郎党に指示します。興世王は、藤太はつい最近将門を訪ねたのにけしからん、と言い、員経も、殿は藤太を信じていたのに、と悔しそうに言います。その言葉に一同は一瞬暗くなりますが、まあよいではないか、と将門は笑って言います。将門には、藤太の裏切りを怒る気持ちがなく、自分でも訝しく思うほどでしたが、ともかく今は、勇名轟く藤太と堂々と対決しよう、と決意します。

 将門は石井の館を出立し、先陣には将門の率いる兵300、中軍には将頼の率いる兵200、後詰めには多治経明や文室好立の率いる兵500という構成でした。将門軍はさしたる抵抗もなく、下野の奥深くまで進みますが、いくら進んでも藤太軍には遭遇しません。将門は不審に思い、員経は、藤太は将門と戦うことを怖れて逃げ出したのではないか、と言いますが、伏兵があるかもしれない、と将門は疑います。そのとき、中軍にいた清忠が来て、我々は数で勝る藤太軍が待ち伏せなどせず堂々と迎え撃つだろう、と考え違いをしていたのではないか、と言います。4000もの兵が我々の物見にも見つからないということがあるだろうか、と員経は疑問を呈しますが、それが可能だとしたら、よほど統制のとれた兵たちなのだろう、と清忠は言います。そんなことができるはずはない、と員経は言いますが、それができる男かもしれない、と将門は言います。声を立てずにじっと潜んでいよとの命令に背けば斬る、ということを藤太は徹底させられる男かもしれない、と将門は言います。

 その頃、将門の後詰めの軍は、先陣・中軍よりかなり遅れていました。多治経明と文室好立は山上にいる藤太の伏兵に気づき、藤太軍が隙だらけに見えた二人は、将門に知らせず攻撃することにします。しかし、藤太軍の統制された攻撃の前にあっさりと返り討ちに遭います。多治経明や文室好立は、わずかな兵とともに将門のいる先陣へと帰還します。将門は全軍一団となっての退却を決意し、数で優勢な藤太軍を前に郎党たちは危惧しますが、将門は見事に退却していきます。藤太軍に加わっていた藤原為憲は、一気に追撃しようと藤太に進言しますが、藤太に一喝されます。将門がどれほど恐ろしい敵か今に分かる、と藤太は言います。退却していく将門軍を見て、藤太は付け入る隙がないと誉め、為憲とともに藤太軍に加わっていた貞盛は、全軍が鋭い刃のようだ、と言います。藤太は、下総に進軍したさいにもっとも怖れているのは、豪族ではなく民人の動向だ、と言います。藤太は貞盛に、兵2000を与えるので、どんな手を使ってもよいから将門を民人から孤立させるよう、貞盛に指示します。退却していく将門は、自分がついに生涯でもっとも恐ろしい敵に出会ったのだ、と思います。しかし、将門の心は、まだ勝利への自信に満ちていました。

 今回はこれで終了となり、いよいよ残すところは1回だけとなります。螻蛄婆が懸念していた通り、純友の陣営ではついに亀裂が生じますが、恒利はしたたかで、あまりにも俗っぽいところがありましたから、この展開もとくに不自然ではありません。恒利は、貞盛の云う公への人々の信仰を象徴してもいるのでしょう。最近よいところのなかった貞盛は、藤太に中央の情勢を知らせ、将門と都から向けられた大軍との戦いで板東が荒れるだろうという懸念を伝えるなど、久々に冴えているところを見せて、藤太を引き込むことに成功しました。藤太は将門を都と戦い抜く板東の主としては失格だと判断しましたが、慎重なだけに、現在勢いのある将門をただちに討とうとは考えていませんでした。貞盛が藤太の心中を深く理解できていたかというと疑問ですが、貞盛の要請が、理由・時期ともに藤太にとってきわめて説得力のあるものだったことは、これまでの描写からはっきりと分かるようになっています。原作の功績も大きいのでしょうが、脚本もしっかりしている、と改めて思います。藤太が厳しい人物であることは、藤太軍の統制がしっかりとれていることで、改めて印象づけられました。多治経明や文室好立の軽率なところも以前に描かれており、人物造形がしっかりとしていることが、物語の展開に説得力を与えているように思います。今回は、藤太が主人公といった感もありましたが、昔の自分と似ていると思う将門を討つ決意をするにいたる藤太の苦悩がよく表現されていて、露口茂氏はやはり期待通りの演技を見せてくれます。

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