チベット人の高地への適応

 チベット人の高地への適応に関する遺伝学的研究(Simonson et al., 2010)が報道されました。チベット高原は人間にとって過酷な居住環境であり、低地居住者がこの地域を訪れると、体内の酸素不足によって高山病を発症し、心臓や脳の致命的な炎症に罹る恐れがあります。この研究によると、チベット人がきわめて高緯度の土地でも生存できる理由の一つとして、血中ヘモグロビン値を低く抑える2種類の遺伝子を持っていることが明らかになった、とのことです。この研究では、チベット人の高地適応に関与してきたと思われる遺伝子領域を特定するため、チベット人のゲノム変異パターンが。低地に住む中国人および日本人のものと比較されました。

 この研究では、まず既知の機能から、高地への適応に何らかの役割を果たしているように見える遺伝子の差異が探されました。続いて、チベット人集団では頻発するが低地居住者集団では少ないDNA変異パターンを含むゲノム断片が探されました。遺伝子‘EGLN1’および‘PPARA’など、ごくわずかな遺伝子が両カテゴリーに認められ、チベット人の低ヘモグロビン値に寄与している、と推測されました。このようにチベット人ではヘモグロビン値が低いため、チベット人以外が高緯度状態に置かれた時には高ヘモグロビン値が続いて合併症をきたしますが、チベット人の場合はその発症を相殺しているのではないか、と推測されています。低酸素症に対する体の反応をさらに詳しく解明できれば、高山病をはじめとする低酸素症関連疾患の治療に役立つ重要な手がかりを得ることができるだろう、と期待されます。


参考文献:
Simonson TS. et al.(2010): Genetic Evidence for High-Altitude Adaptation in Tibet. Science, 328, 5987, 72-75.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1189406

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