今年のノーベル平和賞は劉暁波氏に決定

 今年のノーベル平和賞は、中国の劉暁波氏に授与されることになりましたが、中国ではNHKなど外国のマスコミによるこの報道が妨害され、中国外務省の馬朝旭報道局長は、劉暁波氏のノーベル平和賞の受賞について、「劉暁波は中国の法律を犯し、中国の司法機関が懲役刑を科した罪人である。このような人物に同賞を与えることは、賞の目的に背き、これを汚すものだ」と強く反発する談話を発表するとともに、「中国とノルウェーとの関係も損なわれることになる」とノーベル賞委員会のあるノルウェーに対しても警告したそうです。

 中華人民共和国の国籍を有する人物としては初のノーベル賞受賞者となった劉暁波氏は、中国の作家・人権活動家で、中国の民主化・人権擁護を主張した宣言文である零八憲章の起草者の一人として有名ですが、そうした活動のため、国家政権転覆扇動罪により懲役11年の判決が確定しています。また劉暁波氏、は第二次天安門事件で民主化運動に加わり、1989~1991年に投獄されたこともあります。筋金入りの人権活動家と言えるでしょう。

 劉暁波氏の受賞にたいして、日本の「進歩的で良心的」な言説のなかには、ノーベル平和賞の政治的性格や、ヨーロッパ・アメリカ・日本といったいわゆる先進諸国の中国にたいする植民地主義的眼差しを強調した、冷ややかなものも出てくるだろう、と思います。そうした言説のなかには、たとえば「解放」前のチベット社会を抑圧された暗黒社会だとし、中国政府の政策を擁護する見解と親和的なものもあるでしょう。ただ、さすがに、「和平演変」という言葉を用いて中国政府を露骨に擁護するような言説は、日本ではほとんど見られないでしょうが。

 それはさておき、抑圧の強い政治体制の国とって都合の悪い人物にノーベル平和賞が授与されることもあるなど、ノーベル平和賞の政治的性格の強さは否定できません。また、ヨーロッパ・アメリカ・日本の中国にたいする視線に、文明対野蛮とでも言うべき偏見があることも、否定できないだろう、と思います。さらに、いわゆる先進諸国のさまざまな問題を指摘し、結果的に中国政府を相対的に擁護するような言説も出てくることでしょう。

 また、このような日本における「進歩的で良心的」な言説の一部のなかには、日本の中国への経済的依存を強調し、中国の安定を脅かすことにつながりかねない劉暁波氏の受賞は、日本にとっても不利益となる、との「現実的」主張も見られるでしょう。こうした言説は、たとえば社民党を非現実的と嘲笑しながら、韓国や中国と断交せよ、などと勇ましく主張する「国士様」にたいする揶揄として、有効であることは認めなければならないかな、とは思います。

 しかし、たとえば同じようなことが日本で起きたらどうかと考えれば、「国士様」や「愚民」の感情論・差別意識を否定したいという意識が強くなるあまり、劉暁波氏の受賞にたいして冷ややかな視線を送り、程度の差はあるにしても、結果的に中国政府を擁護するような、日本における一部の「進歩的で良心的」な言説は、どうもその本来の目的からするとずれているのではないかな、と思います。また、そうした言説は、安全圏からの高みに立ったものであるという意味でも、説得力に欠けるところがあるのではないか、と思います。

 もちろん、これまでに述べてきたような「進歩的で良心的」な言説は私の妄想に過ぎず、じっさいにそんな言説が出てくるのか疑問だ、との批判もあるでしょうが、程度の差はあるにしても、私が予想したような「進歩的で良心的」な言説が日本語で唱えられる可能性は、かなり高いのではないか、と思います。ここまでは余談というか私の妄想で、余談が長くなりすぎたのですが、劉暁波氏の受賞の報道を読んでまず思い出したのが、劉暁波氏の判決が確定する前のブログの記事およびコメントと、確定した後のブログの記事およびコメントです。とくに考えさせられたのは、以下のコメントでした。

 でも、彼らは21世紀の孫文、梁啓超だと思いますよ。彼らの動向を馬鹿にしてはいけないんじゃない でしょうか。思えば日清戦争直後から満州事変まで、日本人は、中国の時の権力者集団とばかり「友好」「友愛」を深めては、却って中国人の恨みを買っていた という歴史の教訓を忘れるべきではないと思うのですが。

 近現代の日本は、中国との関係に苦慮してきた、という側面が多分にあるように思います。大日本帝国の崩壊も、けっきょくは対中国政策の失敗が最大の要因になったのではないか、と思います。その意味で、歴史を振り返りつつ、中国との関係を見直していく必要があるのでしょう。とはいっても、これはたいへんに難しいことで、日本人の多数にとって利益となるような中国との具体的な付き合い方となると、容易に結論が出るとは思えません。もちろん、専門家ではない私に具体的な提言ができるわけではなく、多数の専門家の意見を参考にして考えていくしかないのでしょう。

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