大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』第11回「猿の人質」

 今回から第二部に入ったと言えるでしょう。タイトルから覚悟していたのですが、小物感全開で不愉快な秀吉は今回も変わりませんでした。秀吉の正室おねも、今回が初登場となった側室の京極龍子も、包容力のある魅力的な女性として描かれており、二人とも秀吉に惚れているという設定だけに、いかに秀吉に主人公の敵としての役割を担わせているとはいえ、さすがにそろそろ秀吉の魅力も描いてもらいたいものです。この作品の小物感全開で不愉快な秀吉について、秀吉役の岸谷五朗氏への批判が高まるかもしれませんが、役者よりも脚本と演出の問題だろうと思います。

 この作品が、同じ脚本家の大河ドラマ『篤姫』と比較されるのは、高視聴率だった『篤姫』の再現を狙っていることが露骨に分かるため、仕方のないところですが、今のところ、『篤姫』の出来に遠く及びません。その理由を考えてみると、もっとも大きいのはしっかりとした原作の有無で、この作品では原作の制約を受けない脚本家が大暴走しているといった感があります。『篤姫』では、井伊直弼のように明らかな敵側の人物でも、どうしようもなく魅力に欠ける悪人としてではなく、何かしら魅力を感じさせるように描かれているので、今後秀吉も魅力ある人物として描かれるのではないか、と期待してはいるのですが。

 これと関連して、人物造形、とくに主人公の江については問題が大きいように思います。江は、信長のような「著名人」にひたすら天賦の才?を褒められて、「思うままに」行動しているだけで、今のところ江が何か努力しているという様子が窺えるわけではなく、信長の姪であることをほとんど唯一の理由として、無理な設定で「著名人」に不躾に絡んでいき、秀吉などの「著名人」がなぜか江に信長を見出して恐れ入っているだけのように見えるので、秀吉とは違って脚本・演出上意図されているわけではないのでしょうが、主人公なのに多分に不愉快な存在になっています。この不愉快な江も、秀吉と同じく、役者よりも脚本と演出の問題だろうと思います。私は江を演じている上野樹里氏の力量を高く評価しているだけに、何とかならないものかな、と残念に思っています。

 脚本の問題としてもう一つ私が問題だと思うのは、脚本担当の田渕久美子氏が、どうも歴史作品の創作に不向きなのではないか、ということです。前回の市の初にたいする遺言もそうですが、今回の茶々の秀吉にたいする嫌悪感全開の発言も、その後の展開をおおむね知っているであろう大河ドラマの視聴者の多くにとっては、狙いすぎのように思えるのではないか、と私は考えています。これが、ほぼ全面的な創作で、視聴者のほとんどが先の展開について確信を持てないのであれば、大きな問題ではないのかもしれませんが、大枠では史実の制約を受けてしまう大河ドラマのような歴史作品では、まずい台詞ではないか、と思います。

 初回から残念に思っていることなのですが、三姉妹が一緒にいることが多かった今回さらに見せつけられたのは、茶々と初・江が姉妹には見えず、茶々が初・江の母とまではいかなくても、叔母に見えてしまうことです。江がまだ幼く見える脚本・演出だけに、余計に年齢差を感じてしまい、ハイビジョン放送の功罪を考えさせられます。もっとも、大坂の陣とまではいかなくても、江が満年齢で20代後半になる関ケ原以降には、茶々と初・江の見た目の違いという問題は解決されているのではないか、と期待しているのですが。

 今回は色々と文句をつけてしまいましたが、一応最終回まで見るつもりです。それは、一昨年の大河ドラマ『天地人』を全話視聴したことを考えれば、耐えられないわけはない、ということも僅かながらありますが、大坂の陣そのものや、そこへといたる過程をどのように描くのか、ということに興味があるからです。上野樹里氏の演技の変化に期待しているところもありますし、これからは脚本も少しはよくなるのではないか、との期待もあるのですが、まだ脚本に少し期待しているのは、私も『篤姫』幻想に囚われているためかもしれず、それはNHKの狙い通りなのかもしれません。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 4

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

みら
2011年03月28日 03:19
こんばんわ

最終回まで見る事にしたわけですね。理由が笑えますが、私もほぼ同意見です。
秀吉の人物像に,そろそろふれてほしいですね。

話は変わりますが、先週父が、心筋梗塞によりなくなりまして我が家大混乱でした。
先週のストーリーは、全く覚えていません。

そのうちまた落ち着いて視たいと思います。


メイ
2011年03月28日 11:14
こんにちは

おっしゃるとおりです!と
頷きながら読ませていただきました。

世の批判が脚本演出より俳優女優の方々へ
向かう流れはとても残念でなりません。

視聴率も裏で金八先生があったせいか
またまた最低視聴率を更新。(15%台)
ここまで落ち続けていると
さすがのスタッフも真っ青でしょう。

江を描いた時代小説は何冊も
出版されているので、無理に田渕さんに
原作から執筆をお願いせずに
脚本に専念、といった方が少なくとも
今よりはいい結果がでていたと思います。
2011年03月28日 23:58
お父様が亡くなられたのですか。ご冥福をお祈り申し上げます。


映像作品だと、まず目に付くのが出演者ですから、役者に批判が集まりがちではありますが、この作品については、脚本・演出の問題がきわめて大きいように思います。

脚本・演出も、週刊誌などで批判されてはいますが、どうもメディアは批判の比重を間違えているように思います。次回も裏番組が強力なようですから、視聴率は厳しそうですね。

この記事へのトラックバック