武井弘一『鉄砲を手放さなかった百姓たち』

 朝日選書の一冊として、2010年6月に刊行されました。本書では、江戸時代の百姓が武器を手放したわけではなく、多数の鉄砲(鉄炮)を所持していたことが、史料に即して主張されています。これは、塚本学氏や藤木久志氏などがすでに主張していたことですが、本書では、なぜ百姓が鉄砲を手放さなかったのか、江戸時代の政治・社会の在り様、とくに幕府による鉄砲規制の社会的意味合いという観点から、具体的事例が多数取り上げられつつ詳しく説明されているのが特徴と言えるでしょう。

 幕府は、その威信の象徴の一つとして、鷹狩の維持に執着しており、鷹狩の対象となる鳥の確保のために、村落における鉄砲の所持・使用を制限しようとしました。一方、村落の百姓からすると、開墾地の増大や、幕府直轄の御林には手を付けられないなどといった事情から、耕作地などを荒らす獣の害に悩まされ、その対策として鉄砲の使用を求め続け、幕府と村落との間のせめぎ合いのなか、百姓は鉄砲を対人用の「武器」としてではなく、獣対策の「農具」として鉄砲を所持し、使用し続けました。それは村落による管理・規制であり、そのために、幕府は鉄砲を規制したものの、じっさいの管理は村落に任せました。かつて「武器」として取り入れられた鉄砲を、百姓が自制して利用したことに、著者は人類社会の希望を見出しています。

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