小路田泰直『邪馬台国と「鉄の道」』

 歴史新書の一冊として、洋泉社から2011年4月に刊行されました。小路田氏の著書では、邪馬台国論争を手掛かりとして、近代日本におけるナショナリズムと歴史認識の問題を論じた『「邪馬台国」と日本人』が面白く、自サイトで取り上げたことがありました。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~hampton/read003.htm

 本書は、その『「邪馬台国」と日本人』において、邪馬台国が畿内にあろうと九州にあろうとどちらでもよい、と軽率に述べてしまったことへの反省が執筆動機とのことで、期待して読み始めたのですが、正直なところ、かなり困惑させられる内容でした。一般にもよく知られている『日本書紀』や『古事記』や「正史」などの史書のみならず、地名や神社の由来などの伝承を大いに活用することで、古代の流通と社会を復元し、日本古代史像を見直す、という意欲的な試みではあるのですが、本書の最後に、「ただし展開したのはどこまでも仮説なので、実証的でないといわれればそこまでだ」と述べられているように、専門分野ではないにしても、歴史学の研究者が一般向けに執筆した歴史本としては、かなり問題があるように思います。

 それは、神武など実在を疑う見解が主流と言ってよい人物の実在を主張しているからではなく、封建制という概念について、しっかりと定義されているわけではなく、通時的に用いていることや、地名や慣習や神社の伝承などがいつからのものなのか、詳しく言及されるわけでもなく、漠然と古くからあるかのような前提で議論が展開されているように思われるからです。つまり、その時代の概念・価値観・名称に基づく議論かどうか怪しく、超歴史的というか、あまりにも長期間にわたる一貫性を前提とした主張になっているのではないか、との疑問が残ります。古代と近代とをあまりにも異質な世界として認識することへの疑問など、本書の主張には考えさせられるものが多いとは思いますが、まだ方向性が漠然と示された段階で、検証・議論が大いに必要なのでしょう。

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