ネアンデルタール人によるオーカーの利用?

 早期ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)によるオーカーの利用についての研究(Roebroeks et al., 2012)がオンライン版で先行公開されました。この研究では、顔料などに用いられる鉄分を多く含んだ粘土であるオーカーが、石器などの発掘されている、オランダの中部更新世後期の遺跡から発見されたことが報告されています。その遺跡からは赤みを帯びた物質が発見され、さまざまな分析からヘマタイト(赤鉄鉱)と同定されました。

 オーカーの年代は、熱ルミネッセンス法などにより、250000±2000年前となります。この年代は、アフリカにおける中期石器時代早期のオーカーの事例とほぼ匹敵することになります。また、オーカーの産地が数10km以上離れているだろう、と推測されていることも注目されます。この研究では、オーカーの使用者は早期ネアンデルタール人だろう、と推測されていますが、進化は連続的ですし、ネアンデルタール人の定義とも関連して、判断の難しいところだろう、とは思います。ただ、年代と場所から推測すると、このオーカーの利用者が、ネアンデルタール人ではないとしても、ネアンデルタール人の祖先かその近縁集団である可能性は高いと言えるでしょう。

 この研究では、人類のオーカーの使用について、正確な機能はほとんど不明であっても、顔料として解釈される傾向にあったことが指摘されており、オーカー(などに含まれる酸化鉄)が遺跡で発見されただけでは、ただちに象徴的行動を意味するものとは断定できず、さらなる検証が必要だ、という慎重な姿勢が見られます。また現時点では、25万年前頃のヨーロッパでのネアンデルタール人(もしくはその祖先か近縁集団)によるオーカーの使用例が、60000~40000年前頃のヨーロッパのネアンデルタール人によるオーカーの使用と比較して、例外的であることも指摘されており、今後、25万~10万年前ごろのヨーロッパの旧石器遺跡についても、オーカーの痕跡が見られないか、という観点からの検証が必要になるでしょう。

 これらはもっともな指摘ですが、先日このブログでも取り上げたように、ネアンデルタール人も壁画を描いていた可能性が指摘されていますので、
http://sicambre.at.webry.info/201202/article_9.html
http://sicambre.at.webry.info/201202/article_10.html
ネアンデルタール人と現生人類(ホモ=サピエンス)との共通祖先の時点ですでに、現代人とほぼ同水準ではないかもしれないにしても、現代人にある程度近い一定水準以上の象徴的思考能力があったのではないか、と私は考えたくなります。その意味でも、考古学的研究が進んでいるヨーロッパにおいて、10万年前よりもさらにさかのぼる象徴的思考と解釈可能な痕跡の発見例が増加することを期待していますし、そうなる可能性が高いのではないか、と予想もしています。


参考文献:
Roebroeks W. et al.(2012): Use of red ochre by early Neandertals. PNAS, 109, 6, 1889-1894.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1112261109

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この記事へのコメント

2012年03月08日 19:45
これはご教示ありがとうございます。時間を作って読むつもりです。

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