大河ドラマ『平清盛』第28回「友の子、友の妻」

 まだ日付は変わっていないのですが、7月16日分の記事として掲載しておきます。ここまでこの作品では、清盛にとって義朝が好敵手であるという設定が物語の基本的な構造となっていたのですが、今回でついに義朝が退場となり、節目となる回になったように思います。義朝の最期は、正清の舅である長田忠致を頼ったものの、忠致の裏切りを悟り、正清と刺し違えて自害して果てる、というものでした。かつての坂東での義朝と正清との木登りの話と絡めた、藤本氏らしい脚本だったと思います。義朝については、放送開始前に予告を見たときにはかなり不安だったのですが、脚本・演出でなかなか魅力的な人物造形がなされていたこともあって、よかったと思います。脚本・演出・配役の成功と言えるでしょう。正清については、演技に不満もありましたが、不器用な忠臣という感じはよく表現されていたので、全体的には満足しています。

 義朝一行とはぐれた頼朝は、平宗清に捕えられますが、髭切を探しているうちにはぐれたという話になっており、なかなか上手い創作だったと思います。清盛が頼朝に髭切を見せた時の発言からは、前回の清盛と義朝の一騎討ちはじっさいにあったことなのだ、という設定になっており、やはり心象風景ではなかったようです。まあそれでも、清盛が妄想を現実のものと思い込んでいるだけだ、と苦しい解釈をしたくなりますが、本当に残念な一騎討ちでした。今回も頼朝と宗盛は対照的に描かれており、宗盛は今後ずっと、才がなく器の小さい人物として描かれることになりそうです。

 今回は、義朝の最期よりも頼朝の処遇が主題となった感がありますが、これは、清盛にとっての好敵手が義朝から頼朝へと交代する、というのが今後の物語の基本構造になるからでしょうか。もちろん、この時点での頼朝はとても清盛の好敵手という位置づけではありませんが、かつて競馬で義朝に敗北した清盛が立ち上がってついに義朝を打ち負かしたように、頼朝が成長して清盛を乗り越えていく、という構図になるのだろう、と予想しています。おそらくそれ故に、清盛を主人公としながらも、頼朝の扱いがひじょうに大きいのではないのかな、と思います。

 そのためなのか、頼朝の助命については、池禅尼(宗子)の影響が大きかったということでも上西門院(統子)が助命を頼んだということでもなく、清盛が義朝と共有したかった志を頼朝に継がせたいという想いによるものだった、という構図になっていたように思います。この解釈が妥当だとしたら、後に頼朝が挙兵した時に、清盛が激怒しつつも喜んでいる、という描写が見られるのかもしれません。ここまでの頼朝については、少年期を演じた中川大志さんの好演が強く印象に残りました。頼朝ほど大きな扱いにはならないようですが、牛若(後の義経)も重要な役割を担うようで、母の常盤は子供たちの助命を清盛に懇願します。常盤には鬼若(後の弁慶)も絡んできており、後に弁慶が義経に仕える伏線になっているのかもしれませんが、どうもここまでは、鬼若の行動意図がよく分かりません。その義経を演じるのは神木隆之介氏とのことで、この配役を予想していた人は少なからずいたのではないか、と思います。

 源氏以外では、今回で退場となる信頼と、清盛に頼朝の斬首を懇願する西光(師光)と、今回が初登場となる藤九郎(安達盛長)が印象に残りました。この作品の信頼は、最後までお調子者で無能な情けない人物として描かれましたが、おそらくじっさいには保元の乱前よりも義朝と関係を深めており、義朝は信頼にたいして従属的立場にあったのではないか、と思います。信頼は清盛と姻戚関係にあり、異母兄の基成を通じて奥州藤原氏との関係も築いていました。当時の代表的な武門と関係を築いていった信頼が、どうしようもなく無能な人物だったということはなさそうに思うのですが、義朝を清盛の好敵手と位置づけるこの作品の基本的な構造からすると、信頼が無能な人物として描かれたのは仕方がないのかもしれません。

 西光は初登場時より清盛に冷淡な態度を示していましたが、頼朝が助命されたことにより清盛への反感を強めていき、ついには清盛と決定的な対立にいたって斬首される、という話の流れになるのかもしれません。藤九郎は明るい人物のようで、今回の出番は最後に少しだけでしたが、この明るさが失意の頼朝を支えることになりそうです。今回は清盛が武士としてはじめて公卿に昇進するところで終わり、経宗・惟方への拷問は描かれませんでしたが、平氏と源氏を対照的に描くことが主題の回だったので、仕方のないところでしょうか。今回はなかなか面白かったのですが、次回はどうも外れの回になりそうな気がします。もっとも、次々回はかなりの見せ場があるようなので、次回が外れでもそれほど落胆せずにすみそうです。

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この記事へのコメント

SAKAKI
2012年07月16日 22:27
お久しぶりです。私も同感でやはり清盛と義朝の一騎打ちと信頼の描き方が不満です。命掛けの反乱なのですから、皆が用意周到だったはず。脚本に織り込まれた粒々はよいのですが、全体では稚拙な気がしますね。役者さんの熱演に応える脚本を・・
2012年07月16日 22:46
お久しぶりです。

全体的なバランスの悪さを感じることはあります。

脚本とともに、演出・編集の問題でもありそうですが。
みら
2012年07月17日 13:28
著中お見舞いもうしあげます。

梅雨明けしましたね、しかし暑いです、早く涼しくならないかなー。
今年はしんどい夏になりそうです。

視聴率わずかに11%をキープしておりますね。

今回、途中で宅配便が到着して集中を欠いてしまいました、にしてもあまり面白くなかったような・・どちらにしても源氏は全て根絶やしにしておかないからこんな世の中になるのです・・暑さで既に狂い気味(笑)


2012年07月17日 23:56
残念ながら視聴率はこのまま低迷しそうです。

一話完結ではない一年間の連続ドラマで視聴者が戻ってくる可能性は低いでしょうから。
みら
2012年07月18日 00:33
そりゃ冷静に考えれば劉さんのご意見どおりなのはわかっていますが、希望までなくなる駄目だしはいーすぎでは?

まさか、もしやと言う事も、競走馬の世界でもフロックという事もあるじゃないですか。
それを契機にそこそこ飛躍したMr.CBの産駒も知っていますし、ラストまで、わたひはup願いまーす。
2012年07月19日 00:02
まあ、視聴率の低迷が続いても、個人的な視聴には一切関係ありませんし、楽しみに視聴を続けられそうではあります。

第32回射以降は序盤からの主要人物の多くがいないので不安ですが、重盛・西光は終盤近くまでいるでしょうし、決定的につまらなくなることはないでしょう。

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