ネアンデルタール人は植物を食べていた

 まだ日付は変わっていないのですが、7月29日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)が植物を食べていたことを示した研究(Hardy et al., 2012)が報道されました。ナショナルジオグラフィックでも取り上げられています。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究では、スペイン北部のエルシドロン洞窟で発見されたネアンデルタール人の歯が分析されていますが、エルシドロン洞窟で発見されたネアンデルタール人の骨はDNA解析もすでに行われており、ネアンデルタール人の言語能力についての研究(関連記事)や、ネアンデルタール人の肌や髪の色についての研究(関連記事)や、ネアンデルタール人の社会構造についての研究(関連記事)などの成果が公表されています。

 この研究では、50000年前頃のネアンデルタール人5個体分の歯石が分析され、検出された植物のデンプン粒にはひび割れが確認されたことから、植物が事前に加熱されたことが判明しました。また、木を燃やした煙に含まれる化合物も確認された、とのことです。こうしたことからこの研究では、肉食主体と考えられていたネアンデルタール人の食性の見直しが提言されています。またこの研究によると、ネアンデルタール人はセイヨウノコギリソウ(ヤロウ)とカミツレ(カモミール)も食べていたことが明らかになりましたが、いずれも栄養的価値に乏しく、苦い味のする植物です。ネアンデルタール人は苦味を感じる遺伝子を有していたことが判明しているので、治療目的で用いられていたのではないか、とこの論文の筆頭著者であるハーディ氏は指摘しています。

 この研究では、エルシドロン洞窟に居住していたネアンデルタール人には、特定の植物の選択・利用のできる洗練された自然環境についての知識があっただろう、と指摘されていますが、このようなことがわざわざ指摘されるのは、現生人類(ホモ=サピエンス)アフリカ単一起源説が圧倒的に優勢になって以降、ネアンデルタール人と現生人類との違いというか、現生人類と比較してのネアンデルタール人の知的能力の低さを強調する見解が主流になり、今でもその影響が強いからでしょう。もちろん、ネアンデルタール人と現生人類は異なる系統の人類集団ですから、何らかの違いはあったでしょうが、現生人類アフリカ単一起源説が圧倒的に優勢になった1990年代後半以降の一時期、ネアンデルタール人が過小評価される傾向にあったのは否定できないのではないか、と思います。


参考文献:
Hardy K. et al.(2012): Neanderthal medics? Evidence for food, cooking, and medicinal plants entrapped in dental calculus. Naturwissenschaften, 99, 8, 617-626.
http://dx.doi.org/10.1007/s00114-012-0942-0

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