ケニア北部で発見された初期更新世の化石

 人類化石の発見地として有名なケニア北部のクービフォラで2007年~2009年にかけて発見された、195万年前頃~178万年前頃の3個の人類化石についての研究(Leakey et al., 2012)が報道され、ナショナルジオグラフィックでも取り上げられています。この研究は『ネイチャー』の今週号で表紙に取り上げられているくらいで、この年代の人類化石は乏しいので、確かにそれだけの価値のある発見・研究だと思います。3個の人類化石は、顔面がよく保存された少年(“late juvenile”とされており、十代後半ということでしょうか)のものである“KNM-ER 62000”と、ほぼ完全な下顎骨の残る“KNM-ER 60000”と、下顎骨の断片の残る“KNM-ER 62003”です。

 これら新たに発見された3個の化石と“KNM-ER 1470”は歯の特徴が一致し、“KNM-ER 62000”の顔面は“KNM-ER 1470”のそれとよく似ているので、これら新発見の3化石は、解剖学的には“KNM-ER 1470”と同じ系統に分類されます。“KNM-ER 1470”は、ホモ=ルドルフェンシスの正基準標本とされていますが、これをアウストラロピテクス属と分類する見解や、“KNM-ER 1470”の平坦な顔面は地中で変形したのではないか、との見解も提示されており、ホモ=ハビリスとの分類上の関係も含めて、更新世初期のホモ属的な特徴を有する人類化石をどのように分類するのか、初期ホモ属はどのように進化していったのか、という問題をめぐる議論は長年錯綜してきた感があります。

 “KNM-ER 62000”と“KNM-ER 1470”の顔面が似ていたことから、“KNM-ER 1470”の平坦な顔面は地中での変形によるものではなく、“KNM-ER 1470”の種としての特徴とだと考えられます。この研究チームは、ルドルフェンシスという種区分を前提とするのではなく、現在ハビリスと分類されている主要な化石が“KNM-ER 1470”と同系統に分類される可能性も視野に入れて、調査・解析を進めているようです。もしそうなると、“KNM-ER 1470”の含まれる系統がハビリスとされ、現在ハビリスと分類されている、小さく外見が原始的な化石は異なる系統に分類されるかもしれません。

 ハビリスやルドルフェンシスと分類されてきた人骨をアウストラロピテクス属と分明する見解もありますが、現在有力なホモ属と分類する区分にしたがった場合、この研究で提示された見解が妥当だとすると、180万年前頃のアフリカ東部には、エレクトスの他に、二つの種のホモ属が存在したことになります。おそらくホモ属は、初期の時点から多様に分岐していき、そうして分岐していった系統の一部からエレクトス(アフリカの異論の余地のない最初期のホモ属をエルガスターと分類し、エレクトスと区分する見解もあります)が出現し、現代人にまでつながっているのでしょう。


参考文献:
Leakey MG. et al.(2012): New fossils from Koobi Fora in northern Kenya confirm taxonomic diversity in early Homo. Nature, 488, 201–204.
http://dx.doi.org/10.1038/nature11322

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  • ルドルフェンシス化石のより正確な年代

    Excerpt:  これは10月20日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのがたいへん遅くなってしまいましたが、ホモ=ルドルフェンシス(アウストラロピテクス属に分類する見解もあります)と(便宜的に?)分類されてい.. Weblog: 雑記帳 racked: 2016-10-19 19:15