ナショナルジオグラフィックチャンネル「石器時代のセックス」

 デニソワ人についての特集です。表題は、現生人類(ホモ=サピエンス)がネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)やデニソワ人など他系統の人類と交雑していた可能性が高い、との近年の研究動向を反映してのものなのでしょう。とくに目新しい情報はないのですが、デニソワ人が発見されてからの研究状況の概略が説明され、デニソワ洞窟や中国への取材もありましたし、古生物造形作家による更新世の現生人類・ネアンデルタール人・デニソワ人の顔の復元や、それに基づいて俳優に特殊メイクを施して撮影する様子も見られ、興味深い映像となりました。

 スバンテ=ペーボ博士も出演し、既知の人骨の中に、遺伝学的に特定されたデニソワ人と同種のものがあるのではないか、との仮説から中国に赴きます。中国で発見された更新世の人骨のうち、デニソワ人と同種の可能性もあると考えられ、DNA解析が可能だったものは、残念ながら現生人類に分類されました。デニソワ人の解剖学的特徴をある程度復元するには、保存状態のよい新たな人骨の発見が必要なのでしょう。

 この番組でも、デニソワ人はシベリアから東南アジアまで広範囲に生息していた、という見解が採用されていました。生態学的環境という意味では、ネアンデルタール人以上に広範に存在したデニソワ人とはどのような人類なのか、どうも想像しにくいところがあります。デニソワ人は適応力の高い人類だったのでしょうが、それは生理的な面だけではなく、認知能力の面でも言えることなのかもしれません。

 番組で一つ疑問だったのは、デニソワ洞窟において発見された装飾品で、デニソワ人と年代の重なるものを、現生人類の所産と断定していることです。近年、デニソワ人と近い系統のネアンデルタール人にも、独自に装飾品を作っていた可能性が強く主張されるようになっていますので、デニソワ洞窟の装飾品がデニソワ人の所産である可能性も、少しは考慮に入れておいた方がよいのではないか、とも思います。


 ついでに、このブログのデニソワ人関連の記事を以下にまとめておきます。

未知の人類のミトコンドリアDNA?
http://sicambre.at.webry.info/201003/article_26.html

デニソワ人の核DNA
http://sicambre.at.webry.info/201012/article_24.html

古人類のDNA解析から見えてくる人類史における交雑と進化
http://sicambre.at.webry.info/201108/article_19.html

オーストラリア先住民のゲノム解読とデニソワ人との交雑
http://sicambre.at.webry.info/201109/article_24.html

現代東アジア人にデニソワ人の遺伝的痕跡?
http://sicambre.at.webry.info/201111/article_4.html

デニソワ人のゲノム配列
http://sicambre.at.webry.info/201209/article_4.html

『ナショナルジオグラフィック』2013年7月号「デニソワ人 知られざる祖先の物語」
http://sicambre.at.webry.info/201307/article_17.html

M. F.ハマー「混血で勝ち残った人類」
http://sicambre.at.webry.info/201310/article_3.html

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  • デニソワ人についてのまとめ

    Excerpt:  これは9月28日分の記事として掲載しておきます。種区分未定のデニソワ人(Denisovan)については、以前このブログの関連記事をまとめたことがあります(関連記事)。その時は関連記事のリンクを貼った.. Weblog: 雑記帳 racked: 2017-09-24 19:56