さかのぼる投槍の起源

 まだ日付は変わっていないのですが、11月29日分の記事として2本掲載しておきます(その一)。投槍の起源についての研究(Sahle et al., 2013)が報道されました。研究の方は流し読みした程度ですが、備忘録としてとりあえずブログに掲載しておきます。投槍のような投射武器により、人類はより安全な狩猟が可能となりました。これまで、投射武器は現生人類の拡散に貢献したと考えられており、その起源は8万年以上前までさかのぼるとされてきました。しかしこの研究では、エチオピア主地溝帯のガデモッタ層(Gademotta Formation)で発見された黒曜石製の石器が、投槍の穂先として用いられた可能性の高いことと、その年代が279000年以上前までさかのぼることを明らかにしています。

 武器としての尖頭器が衝撃を受けると、表面にV字形の剥離模様「フラクチャー・ウィング」が形成されるそうです。エチオピア主地溝帯のガデモッタ層で発見された黒曜石製の尖頭器十数点のフラクチャー・ウィングを分析したところ、剥離速度の平均値は槍を突き刺した時の最大速度に、また剥離速度の最大値は槍が衝突した時の速度にほぼ相当したそうです。こうした証拠により、エチオピア主地溝帯のガデモッタ層で発見された黒曜石製の尖頭器は投槍の穂先として用いられた、と結論づけられています。

 279000年前となると、現時点での証拠では、現生人類(ホモ=サピエンス)出現前となります。そのためこの研究では、投槍に見られる複雑な行動は現生人類特有ではない、と指摘されています。さらにこの研究は、遺伝学・形質人類学・考古学などの証拠から、アフリカ東部が現生人類の起源地として重要だった、との見解を提示しています。

 じゅうらいは現生人類に特有とされてきた「複雑な」行動の起源が、現生人類の出現前までさかのぼることを指摘する研究が、近年では増えているように思われます。ただ、種区分の難しさという問題とも関係しますが、現生人類の起源(現時点で最古の現生人類人骨は195000年前頃、確実な証拠では160000~154000年前頃)は今後さらにさかのぼる可能性もあるでしょう。その意味でも、この279000年以上前の投槍がどの人類種の所産だったのか、現時点では判断の難しいところです。

 上記報道では、その担い手はホモ=ハイデルベルゲンシスと推測されていますが、ハイデルベルゲンシスというよりは、ホモ=ローデシエンシスとかホモ=ヘルメイとか呼ばれることもある、より現生人類に近い人類集団と考える方がよさそうに思います。また、上述したように、現生人類の起源がさらにさかのぼるかもしれない可能性を考慮すると、エチオピア主地溝帯のガデモッタ層で発見された黒曜石製の尖頭器が現生人類の所産である可能性も多少は念頭に置く方がよいかもしれません。


参考文献:
Sahle Y, Hutchings WK, Braun DR, Sealy JC, Morgan LE, et al. (2013) Earliest Stone-Tipped Projectiles from the Ethiopian Rift Date to >279,000 Years Ago. PLoS ONE 8(11): e78092.
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0078092

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