中国で発見された未知の人類種?

 まだ日付は変わっていないのですが、11月5日分の記事として掲載しておきます。もう一年半以上前になりますが、中国南部で発見された更新世~完新世移行期の人骨についての研究(Curnoe et al., 2012)が報道されました。なるべく早いうちに取り上げようと思っていたのですが、多忙を理由に後回しにしていたら、一年半以上も経過してしまいました。この研究では、中国の広西チワン族自治区隆林各族自治県の洞窟遺跡で1979年に発見された人骨と、雲南省馬鹿洞で発見された人骨とが分析されています。暦年代では、隆林人骨が11510±255年前、馬鹿洞人骨が14310±340年前~13590±160年前となります。

 20000年前以降に存在が確認されている人類は、現生人類(ホモ=サピエンス)以外ではインドネシア領フローレス島で発見されたホモ=フロレシエンシスのみです。ところがこの研究では、同じ集団に属するとされる隆林人骨と馬鹿洞人骨の人骨には原始的特徴が認められる、と指摘されています。この研究では、隆林人と馬鹿洞人は現生人類以外の「古代型」人類の末裔の未知の種であるという可能性と、アフリカからユーラシア南東部へと進出した初期現生人類(現代人の主要な遺伝子源ではなく、現生人類の出アフリカは複数回あったとされます)の末裔であるという可能性が想定されています。

 隆林人骨と馬鹿洞人骨を分析した研究者たちは、どちらかというと、隆林人と馬鹿洞人は新たな人類の系統である、という仮説に傾いているようです。しかし、この仮説には批判的な研究者が多いようです。初期現生人類の頑丈な体格を過大に誤って解釈したり、現生人類の多様性を見落としたりしているというわけです。ただ、この研究でも指摘されているように、ユーラシア東部における後期更新世の人骨はそもそも少なく、年代も含めて詳細な分析に乏しいことは否定できないでしょう。今後は、新たな人骨の発見とともに、すでに発見されている人骨の研究の進展に期待しています。


参考文献:
Curnoe D, Xueping J, Herries AIR, Kanning B, Taçon PSC, et al. (2012) Human Remains from the Pleistocene-Holocene Transition of Southwest China Suggest a Complex Evolutionary History for East Asians. PLoS ONE 7(3): e31918.
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0031918

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