『天智と天武~新説・日本書紀~』第35話「朝倉宮異変」補足

 今日は3本掲載します(その三)。たいへん衝撃的だった第35話の感想で述べ忘れたことがあるので、補足しておきます。朝倉社の神木を伐採して朝倉橘広庭宮を造営した神罰により、宮殿が壊れ、宮中にて「鬼火」が見え、従者たちが多く病死した、と『日本書紀』に見えます。今回描かれた蛍がその「鬼火」ということなのかな、と思います。中大兄皇子が斉明帝の喪を行なって磐瀬行宮に戻った夕べに、朝倉山の上に「鬼」が現れ、大笠を着て喪を見ていたので、人々が怪しんだ、との『日本書紀』の記事も作中に取り入れられるかもしれず、楽しみです。

 中大兄皇子の権勢欲の強さは序盤から描かれていましたが、今回の中大兄皇子の発言からも、自分ではなく大海人皇子が帝位を継承するのではないか、との危惧が中大兄皇子にあることを窺わせます。もっとも、中大兄皇子の心理としては、権勢欲の強さも愛情を求めることも渾然一体ということなのかもれしません。入鹿・斉明帝・中大兄皇子・大海人皇子の愛憎劇は、人間の業を描いた上手い設定・描写になっているな、と思います。

 斉明帝が入鹿に惹かれたのは、二度にわたる心の通わない婚姻に疲れ果てていたからでした。ということは、二番目の夫の舒明帝との関係も上手くいかなかったわけで、舒明帝の人物像も気になるところです。これまで、舒明帝はその存在が何回か言及されていますが、人物像はまったく明らかになっていません。斉明帝もその弟の孝徳帝も作中では凡庸な人物といった感じですから、中大兄皇子は父の舒明帝から優秀な頭脳と冷酷な性格を受け継いだ、という設定なのかもしれません。まあ、舒明帝の人物像が今後描かれることはなさそうかな、とは思いますが。

 斉明帝は次回で崩御ということになりそうですから、今後の愛憎劇の中心を担うのは、中大兄皇子・大海人皇子・豊璋・額田王と大田皇女・鸕野讚良皇女(持統天皇)姉妹になるのではないか、と予想しています。かつて豊璋を憎み大海人皇子に仇討を頼んだ大田皇女の現時点での心境は明らかになっていませんが、鸕野讚良皇女は今でも豊璋を恨んでいるようです。時期は不明ですが、大海人皇子は中臣鎌足(この作品では豊璋と同一人物)の娘二人(氷上娘・五百重娘)を夫人としています。

 そうすると、今後大海人皇子と豊璋とがさらに接近することになりそうで、現時点では良好そうに見える大海人皇子と大田皇女・鸕野讚良皇女姉妹との関係も変わってくるかもしれません。おそらく、大海人皇子が酒宴で槍を板に突き刺し、中大兄皇子(天智帝)が激怒して大海人皇子を殺そうとしたところ、中臣鎌足がとりなした、という有名な逸話も取り入れられて、大海人皇子と豊璋との関係がさらに近くなりそうな気がします。

 すでに大海人皇子は豊璋の息子の史(不比等)を匿っていますが、白村江の戦いの後に帰国する真人(定恵)も、通説のように殺されるのではなく、大海人皇子に助けられて後に粟田真人になり、それも大海人皇子と豊璋との距離を縮めるのではないか、と予想しています。こうなると、一体いつまでが主に描かれるのだろう、と気になるところです。表題からすると、壬申の乱で終わりなのかもしれませんが、できれば、不比等が実権を握るところまでは現在のような感じで詳しく描かれるとよいな、と思っています。

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