池谷和信「熱帯地域における狩猟採集民の移動の特徴」『人類の移動誌』第2章「アフリカからアジアへ」第2

 印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(関連記事)所収の論文です。本論文は、アフリカの熱帯雨林地域と砂漠地域の狩猟採集民の事例から、狩猟採集民の移動の特徴をモデル化しています。本論文は、人類史の99%以上は狩猟採集の時代だった、と指摘しています。しかし、本論文で取り上げられているアフリカの熱帯雨林地域の狩猟採集民の事例からも明らかなように、現代の狩猟採集民の中には農耕民と密接な関係を築いている集団も多く、農耕開始前の狩猟採集民の行動の特徴を推測するのは容易ではありません。

 本論文は、狩猟採集民の移動の基本単位は家族だとし、家族の集合たるバンド単位による移動を、アフリカの狩猟採集民の事例から、遊動型・半定住型・定着型の3類型に区分しています。遊動型の移動先は植物資源の分布に大きく左右されるのですが、家族単位での移動では、メンバー間の軋轢や婚姻などの社会的要因が大きく影響する、とのことです。半定住型では、農耕を組み入れた場合には、集落キャンプに誰かが常駐し、長期間移動する人々との間での分業が見られるそうです。定住型では、本拠地の集落から男性のみが狩猟に行ったり、家族が結合して短期間の狩猟採集を行なったりするそうです。

 狩猟採集民の移動については、この3類型を基本としつつも、数十年単位のより長期的視点では、気候変動や流行病などにより、「長距離移動」も見られる、と指摘されています。この場合、元の場所に戻ることもあれば、そのまま移動先に居座ることもあるそうです。また、20世紀になると、国家の移動政策や戦争が大きな移動要因となってきます。国家の政策により、狩猟採集民に定住や農耕が勧奨(というか強制)されることもあり、これは狩猟採集民のみならず遊牧民にも当てはまり、またアフリカに限らないことでもあります。


参考文献:
池谷和信(2014)「熱帯地域における狩猟採集民の移動の特徴」印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(臨川書店)第2章「アフリカからアジアへ」第2節P69-85

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