斎藤成也「DNA解析が語る東南アジア人の移動誌」『人類の移動誌』第2章「アフリカからアジアへ」第3節

 印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(関連記事)所収の論文です。本論文は、ミトコンドリアDNAと核内DNA一塩基多型の解析から、東南アジアにおけるさまざまな人類集団の移動を復元した研究成果を提示しています。本論文は、フィリピンやボルネオなどへの人類の進出は、完新世になって台湾を拠点に行なわれた、とする「特急列車(出台湾)説」ではなく、更新世に大陸部東南アジアから行なわれたとする「早期列車説」が妥当だろう、と主張します。

 本論文によると、ミトコンドリアDNAの解析では、オラン・アスリ(マレー半島に居住するネグリト人およびセマン人の集団)のネグリト人のなかには、サフル人(オーストラリアとメラネシアの先住民)と近い個体もあるそうで、ネグリト人とサフル人の共通性を以前より指摘していた人類学の研究成果と合致する、とのことです。しかし本論文は、こうした集団単位でのDNA解析は依然として有効であるものの、数万年間の集団拡散によって少しずつ蓄積されてきた遺伝的多様性は、混血により短期間で失われていくものであり、今後東南アジアでは、急速に遺伝的には均質な集団が形成されるのではないか、との見通しを提示しています。


参考文献:
斎藤成也(2014)「DNA解析が語る東南アジア人の移動誌」印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(臨川書店)第2章「アフリカからアジアへ」第3節P86-93

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