木村亮介「ゲノムからみた男と女の移動のちがい」『人類の移動誌』第5章コラム5

 印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(関連記事)所収のコラムです。本コラムは、ミトコンドリアDNAや性染色体の分析から、性別によって人類の移動や混血にどのような偏りが生じたのか、という研究を紹介しています。この偏りの原因の一つとして、婚姻後の居住形態が考えられます。夫方居住社会では、Y染色体はミトコンドリアDNAと比較して分集団間で配列の違いが大きくなり、妻方居住社会では、その逆になる、というわけです。20世紀末には、ミトコンドリアDNAよりもY染色体の方が一般的には集団間分化が大きく、人類社会では夫方居住が主流だった、との研究が提示されました。しかし21世紀初頭の研究では、ミトコンドリアDNAとY染色体とでは集団間分化は同程度で、女性の移住率が一般的に高かった証拠はない、と報告されているそうです。

 過去の大規模な混血についても性別の偏りが指摘されており、15世紀末以降に中南米に持ち込まれたヨーロッパ人由来のY染色体は、ヨーロッパ人由来のミトコンドリアDNAと比較して圧倒的に多いことが判明しています。台湾かユーラシア南東部よりニューギニア島北岸を経由して太平洋の島々に拡散したオーストロネシア語系集団(ポリネシア人)についても、そのミトコンドリアDNAはほとんどオーストロネシア語系由来であることが示唆されているのにたいして、Y染色体では、オーストロネシア語系由来が4割・ニューギニア先住民系由来が6割程度とのことです。このことから、ポリネシア人の祖先たるオーストロネシア語系集団は、ニューギニアにおいて先住民集団から男性を受け入れたものの、女性はほとんど受け入れなかったというか、ニューギニア先住民がオーストロネシア語系集団に嫁を出さなかった可能性が指摘されています。このことから、本コラムでは両集団間の信頼関係の欠如が示唆されています。


参考文献:
木村亮介(2014B)「ゲノムからみた男と女の移動のちがい」印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(臨川書店)第5章「移動を検証する多様な技術」コラム5 P328-330

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