坂野潤治『日本近代史』第10刷

 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2013年2月に刊行されました。第1刷の刊行は2012年3月です。本書は、1857年~1937年の80年間を対象とし、日本における近代国家の形成と展開を論じています。新書としてはかなり分厚く、読みごたえがありました。本書の特徴は、日本近代史を6段階に区分していることです。改革期(公武合体、1857年~1863年)→革命期(尊王倒幕、1863年~1871年)→建設期(殖産興業、1871年~1880年)→運用期(明治立憲制、1880年~1893年)→再編期(大正デモクラシー、1894年~1924年)→危機期(昭和ファシズム、1925年~1937年)となります。その後に来るのは、崩壊期(大政翼賛会)です。

 本書を読む前は、一般向け通史ということで、広範な事象を取り上げているのかな、と予想していたのですが、ほぼ政治史に特化した内容でした。経済に関しては少し言及がありましたが、文化・国民の創出といった問題はほとんど取り上げられていません。この点では予想外というかやや期待外れだったのですが、著者が専門分野から大きく外れないような叙述としたのは、学問的良心と言えるかもしれません。ただ、 この点では期待外れだったとはいっても、近代政治史の復習になりましたし、得たものも少なからずありましたから、全体的には良書だと思います。本書の特徴は、執筆時点での有力説に配慮した無難な教科書的通史になっているというよりは、著者の見解が比較的強く前面に出ている、ということです。

 個々の見解で面白かったものを挙げていくと、まずは、幕末史における「変革の相場」との概念提示です。中国近代史において似たような見解を読んだことがあったので、その対比から納得できるところがありました。寺内内閣は、旧式の帝国主義外交から第一次世界大戦後の新潮流の国際関係(軍縮・民族自決)に対応する外交路線への転向を準備したとして、それなりに高く評価されており、興味深い見解だと思います。「大正デモクラシー」を普通選挙制と二大政党制と定義すれば、原敬は「大正デモクラシー」の敵であった、との評価も印象に残ります。

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  • 先人たちの無能さをあざ笑う

    Excerpt:  先行研究を読まずにひたすら史料を読み、論理的に導かれる確固たる答えを得た後で初めて先行研究を読むと、先行研究が気づいていないことや読み間違っていることがたちどころに分かる、との発言にたいして、 Weblog: 雑記帳 racked: 2019-02-15 17:18