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zoom RSS 伊藤之雄『伊藤博文 近代日本を創った男』

<<   作成日時 : 2015/05/18 00:00   >>

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 講談社学術文庫の一冊として、講談社より2015年3月に刊行されました。本書は、2009年に講談社より刊行された同名書を原本としています。本書を読んで改めて、伊藤博文の生涯をたどることは、明治時代の政治史の要点を抑えることでもあるのだな、と思ったものです。伊藤の伝記なので、当然のことながら伊藤視点の叙述なのですが、私のような門外漢にとっては、幕末〜明治時代の政治史の復習にも適していると思います。

 本書は伊藤を、楽天的で誠実な性格であり、現実的に対応できる柔軟さとともに、容易にぶれない理念を持っており、「剛凌強直(強く厳しく正直)」な人物だった、と評価しています。伊藤の業績・見識・人柄に関して、憲政確立への情熱と理解など全体的に高く評価して好意的な本書ですが、だからといって伊藤を賛美しているわけではなく、若い頃の未熟さや迷走はもちろんのこと、第一人者・元老となってからの見通しの誤りや、それとも関連する、とくに50代後半以降の判断力の低下なども指摘しています。

 英雄あるいは悪人として、伊藤を若き日からその死まで一貫して単純に叙述するのではなく、挫折を味わいつつの成長と老いを指摘する本書は、伊藤の個性と政治的力量・近代国家建設において果たした役割を、かなりのところ的確に提示することに成功しているのではないか、と思います。本書は一般向けでありながら、堅実で本格的な伊藤博文の伝記になっていると思います。今後長く、伊藤博文の伝記の定番であり続けるでしょう。

 伊藤の伝記なので、当然のことながら明治時代の分量が多いわけですが、幕末に関しても興味深い指摘がありました。明治時代の立憲国家建設にさいして、吉田松陰が伊藤に与えた影響は小さくなかったようです。既存の体制を否定して絶対的なもの(藩主や天皇)を設定する論理と、政治の運営にさいして、その絶対者に単に服従するのではなく、あるべき君主になるよう教導し、君主との信頼関係を基盤にする、という態度です。また、藩主の「意志」のもとに「有司」集団が藩政を指導し、特別な場合を除いて藩主は積極的に「意志」を示さない、という幕末期長州の体制も、伊藤に大きな影響を与えたようです。これら幕末期長州での伊藤の経験が、君主の直接的な政治関与を抑制する大日本帝国憲法体制の前提としてあるようです。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
興味深い内容ですね。
機会があれば、読んでみたいです。
何時か、伊藤博文が主役の大河が観たいですし。
今まで出演された大河で、一番印象に残るのは『翔ぶが如く』(小倉久寛)ですね。
近年だと、『八重の桜』(加藤虎ノ介)ぐらいかな。
大河ではないが、『坂の上の雲』(加藤剛)も印象に残りました。
それにしても、今の博文(劇団ひとり)は本当に残念な扱いですね。
地味でイマイチで、テロ(放火)を提案されますし。

それでは〜
ひろし
2015/05/18 16:03
『花燃ゆ』の伊藤博文は、まだ大物感はありませんが、時々優秀なところを見せているとは思います。

満年齢で言えばまだ20歳前後ですし、武家社会では身分が低いことを考えれば、『花燃ゆ』での小物的な扱いは、この時点では決定的におかしいわけではないかな、とも思います。

短期間とはいえイギリスへの留学の後に作中でどう変わっていくのか、楽しみにしています。
管理人
2015/05/18 20:27
著作と関連性がない話題で申し訳ありませんが、伊藤博文の生涯は豊臣秀吉に似ていると思います。

農家の生まれながらも吉田松陰に学び、イギリス留学を経て明治時代になり頭角を現していき、やがて初代内閣総理大臣という政界のトップになります。日本領土拡大を狙って朝鮮に進出。朝鮮総督府として併合を進める最中に現地の青年に銃撃され非業の死を遂げます。

秀吉も農家出身で織田信長に認められて出世、大名となり、太閤にまで登り詰めます。周囲の反対を押しきって朝鮮出兵を行い、二度目の出兵である慶長の役の最中に病死しています。
時代は違えど同じような境遇を辿った二人の政治家。秀吉の朝鮮出兵の遺恨もある上、伊藤の併合計画は朝鮮の人々にとっては苦痛だったと思います。

大河ドラマで伊藤博文を取り上げるとなると幕末から総理大臣になる頃までは良いのですが、問題は晩年ですね。波乱万丈なので題材としては良いと思いますが、韓国から抗議が起こりかねないので、かなりの冒険だと思います。
ぽよっぽ
2015/05/19 03:46
伊藤博文を大河ドラマの主人公にするのは難しそうですね。仮にやったとしても、1年だと『徳川家康』のように駆け足大河になりそうです。
管理人
2015/05/19 20:35

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