『天智と天武~新説・日本書紀~』これまでの展開の整理と今後の予想

 最新の第71話を読んで、年内に完結してしまうのではないか、と不安になったので、これまでの話を整理しつつ、改めて今後の展開を予想してみます。今年(2015年)初めの予想では、年内には「天智帝が病に倒れるところまでは描かれず、進むとしても、大友皇子の太政大臣就任あたりまでになるのではないか、と」述べました。ところが、大友皇子の太政大臣就任は通説とは異なり中臣鎌足(豊璋)の死の前のこととして描かれましたし(第65話)、第71話の最後で、斑鳩寺(法隆寺)が全焼した後、「天智帝は病のために床に臥し、公の場に姿を現さなくなった」と語られています。

 今年12月末発売予定の単行本第9集には、休載がなければ最大で第78話まで採録されるでしょうから、単行本第9集には最大でこの後の7話分が収録されることになります。定恵(真人)死後の展開がそれまでと比較して予想以上に速いことを考えると、残り7話どころか5話で完結しても不思議ではない、とさえ思えます。ただ、定恵死後の展開が予想以上に速いというのは、あくまでも感覚的なものなので、改めてそう言えるのか、白村江の戦い編および定恵帰国編と比較し、検証してみます。

 「白村江の戦い編」も「定恵帰国編」もあくまでも私の区分にすぎないのですが、前者は百済滅亡の報せが倭の朝廷に届いた第25話から大海人皇子(天武帝)・中大兄皇子(天智帝)・豊璋(中臣鎌足)が帰国した第52話までを、後者は定恵が帰国した第55話から鎌足が定恵の死を確認した第60話までとなります。この区分だと、白村江の戦い編は約3年が28話で、定恵帰国編は約3ヶ月が6話で描かれたことになります。最新の第71話では670年4月30日(西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)まで話が進んでいますから、定恵の死後は約4年4ヶ月が11話で描かれたことになります。

 明らかに定恵死後は展開が速くなっているわけですが、定恵死後には、近江への遷都・中大兄皇子の即位(天智帝)・蒲生野での狩り・鎌足の死などの重要と思われる出来事が相次ぐだけに、ここで白村江の戦い編や定恵帰国編よりも展開が速くなるとは、年頭の時点ではまったく予想していませんでした。とくに、大海人皇子・天智帝とともに主人公の一人とも思っていた鎌足の死があっさりと描かれたのは意外でした。白村江の戦い編と定恵帰国編が予想以上に長く、とくに後者はやや間延びした感も否めなかったので、定恵帰国編にこれだけの話数を割くとは、長期連載が確定したのかな、と一時は安心していたものですが、なんとも能天気なことでした。

 上述したように、すでに作中では天智帝が斑鳩寺全焼後に病に臥したことになっていますから、次回はいきなり、『日本書紀』で天智帝が病気になったとされる671年9月まで進んでも不思議ではありません。ここから天智帝の崩御までは2~3ヶ月ですから、本作の完結がいよいよ近づいたな、と実感します。本作では大友皇子・十市皇女夫妻の扱いが大きいので、壬申の乱も詳しく描かれるだろう、と予想してきたのですが、表題はあくまでも「天智と天武」なので、天智死後のこととなる壬申の乱は近江への遷都並みにあっさりとした描写になるのかもしれません。そうだとすると、残り5話もあれば完結できそうです。

 壬申の乱はあっさりとした描写になるとしても、671年10月17日に、病の重くなった天智帝が大海人皇子を呼び、後事を託そうとするものの、大海人皇子が固辞して出家する、というやり取りはやや詳しく描かれるだろう、と思います。といいますか、「兄弟喧嘩」を主題としてきた本作ですから、ここが最大の見せ場になるだろう、とも考えられます。正直なところ、第71話での大海人皇子の言動の意図に関しては今でも解釈に悩んでいるのですが、自国のことを考えて、父(作中設定では蘇我入鹿)の仇としてずっと復讐対象としてきた異父兄の天智帝を本気で救い、和解しようとした、とも考えられます。

 ただ、そうだとすると、壬申の乱へといたる大海人皇子の意図を推測しにくくなります。また、斑鳩寺での大海人皇子とのやり取りを経て、天智帝の心境がどのように変化したのか、ということもまだよく分かりません。両者の心境の変化が明らかにならないと、壬申の乱へといたる展開も予想しにくいところがあります。天智帝が実質的に後継者に指名した大友皇子は叔父の大海人皇子を敬愛していますし、大海人皇子も大友皇子をある程度以上信頼しているように見えるだけに、なおのこと、壬申の乱へといたる展開を予想しづらくなっています。

 鸕野讚良皇女(持統帝)が息子の草壁皇子の将来の即位のために夫の大海人皇子を煽って反乱を起こさせた、という倉本説(関連記事)的な話だと面白くなるかもしれませんが、本作の鸕野讚良皇女は額田王に凄んでみせたこと(第62話)以外は空気なので、今更重要な役割を担うだろうか、とも思います。本作のこれまでの傾向から推測すると、叔父の大海人皇子への憧憬を隠さない大友皇子が、大海人皇子の天智帝への想いに気づいて屈折していき、大海人皇子を殺害して永遠に自分だけのものにしようと考えて、大海人皇子と対立していくのが壬申の乱の決定的な要因になった、という展開になる可能性が高いようにも思われます。

 大友皇子が屈折していく契機として、大海人皇子ではなく大津皇子を想定していたこともあるのですが、単行本第9集で完結するとしたら、大津皇子が重要な役割を担うことはなさそうです。父方祖父の蘇我入鹿と父の大海人皇子の容貌を受け継いだ大津皇子を天智帝は可愛がり、帝位を継承させようとします。天智帝は母親の身分が低いことを表向きの理由として、大友皇子に大津皇子への帝位継承までの中継ぎを命じ、衝撃を受けた大友皇子は帝位・権力への執着を強めていく・・・という予想(というか妄想)だったのですが、そもそも今後大津皇子が登場する可能性は低そうなので、この予想も大外れなのでしょう。

 あるいは、大友皇子は大海人皇子と対立したくなかったものの、蘇我赤兄や中臣金といった近江朝の重臣たちが天智帝の意向を汲んで大海人皇子を排除しようとした結果、壬申の乱に至った、という展開も考えられます。これはやや陳腐な設定なので、ひねった話にすることの多い本作では採用されない可能性が高いでしょうか。大海人皇子が帝位への野望をずっと秘めており、近江朝廷への人々の不満に乗じて政権を奪取しようと考え、そのために一度出家して近江朝廷から離れ、吉野へと退いた、という展開も考えられます。しかし、これまで大海人皇子に帝位継承への強い野望があると描かれていたわけではないので、そうした展開になると不自然だと思います。

 どうも現時点では予想しづらいのですが、これまでの作風からすると、上述したように、大友皇子の大海人皇子への想いが屈折していき、それが壬申の乱の要因になった、という展開になりそうな気がします。病の重くなった天智帝はすっかり弱気になり、斑鳩寺でのやり取りから大海人皇子への憎悪が弱くなったので、経験豊富で人望の厚い大海人皇子を本気で後継者に指名したものの、大友皇子の自分への屈折した想いに気づいた大海人皇子は、大友皇子との戦いは避けられないと覚悟し、近江朝廷への人々の不満に乗じて大友皇子というか近江朝廷と戦う方針を決め、出家して吉野へと退き、近江朝廷から離れたという展開だと、本作らしいかな、とも思います。

 まあ私の予想は、定恵が生き延びて粟田真人として後半生を生きる、という生存説も大外れでしたから、壬申の乱へといたる展開の予想も的中しない可能性が高そうです。次回で大海人皇子の出家まで描かれた場合、年内というか単行本第9集での完結はほぼ確定した、と考えてよいでしょう。次回で671年10月17日の大海人皇子と天智帝との最後のやり取りまで進まないのだとしたら、完結が単行本第10集以降になる可能性も考えられます。その意味で、次回がどのような話になるのか、大いに注目しています。

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