フロレシエンシスの頭蓋の分析

 これは2月20日分の記事として掲載しておきます。更新世フローレス島人の頭蓋に関する研究(Balzeau et al., 2016)が報道されました。AFPでも報道されています。インドネシア領フローレス島のリアンブア洞窟では、更新世の人骨群が発見されています。この人骨群をめぐっては当初、新種なのか、それとも病変の現生人類(Homo sapiens)なのか、という激論が展開されました。しかし現在では、この人骨群をホモ属の新種フロレシエンシス(Homo floresiensis)と区分する見解がおおむね受け入れられているように思われます。

 ただ、フロレシエンシスを人類進化史においてどう位置づけるのかという議論はまだ続いており、当分収束しそうにありません。この議論については大別すると二つの見解が提示されています。一方の見解は当初提示されたもので、フロレシエンシスは東南アジアにまで進出していたホモ属であるエレクトス(Homo erectus)の子孫であり、島嶼化により小型化した、というものです。もう一方の見解は、研究の進展によりフロレシエンシスの祖先的特徴の確認例が増加してきたことから、フロレシエンシスはエレクトスよりもさらに祖先的な系統、たとえばハビリス(Homo habilis)から進化したのではないか、というものです。

 本論文は、フロレシエンシスの正基準標本とされているLB1の頭蓋を分析し、小頭症の患者や現生人類やネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)やエレクトスの頭蓋と比較しました。LB1の頭蓋には、前頭骨内板肥厚症の痕跡が確認されたそうです。本論文は、頭蓋の厚さや形態的特徴から、LB1は現生人類ではない、ということを改めて指摘しています。分析対象となった小頭症の患者のすべての頭蓋には現生人類の派生的な特徴が確認された一方で、LB1にはそれが確認されませんでした。また、LB1の頭蓋には深刻な病変の証拠も確認されませんでした。更新世フローレス島人を病変の現生人類とする見解が、今後大きな影響力を有することはもうないだろう、と思います。

 ただ、頭蓋冠の厚さなど本論文で分析されたLB1の頭蓋の特徴では、LB1を人類進化史においてどう位置づけるのか、決定的な証拠はない、とも本論文は指摘しています。LB1の頭蓋の厚さや形態は、現生人類やネアンデルタール人よりもエレクトスの方との類似性を示していることから、LB1がエレクトスの子孫である可能性は排除されていませんが、そうだと断定できるわけでもない、というわけです。今後も、フロレシエンシスの人類進化史における位置づけについて議論が続いていきそうです。


参考文献:
Balzeau A, and Charlier P.(2016): What do cranial bones of LB1 tell us about Homo floresiensis? Journal of Human Evolution, 93, 12–24.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2015.12.008

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