稀勢の里関の横綱昇進問題

 大相撲夏場所は、白鵬関が全勝で37回目の優勝を果たしました。横綱昇進のかかった稀勢の里関は、13日目に白鵬関、14日目に鶴竜関に敗れたものの、千秋楽は日馬富士関に完勝し、13勝2敗として来場所に再度横綱昇進に挑むことになりました。これまで幕内で、優勝経験どころか優勝決定戦への進出も14勝以上の経験もなく、白鵬関に勝った時はほぼ自身が優勝争いから遠く重圧のあまりかからない状況であり、大関としては水準よりなかなか上の成績という程度の稀勢の里関が横綱に相応しいとはまったく思いませんが、双羽黒(北尾)関の廃業以降、大関で2場所連続優勝が事実上横綱昇進の条件だったにもかかわらず、優勝決定戦進出→初優勝という甘い基準で鶴竜関を横綱に昇進させてしまったのですから、来場所稀勢の里が全勝か14勝1敗で初優勝を果たしたら、相撲協会としても稀勢の里関を横綱に昇進させないわけにもいかないでしょう。

 もっとも、鶴竜関が甘い基準で横綱に昇進したのは、稀勢の里関を横綱に昇進させようと相撲協会が横綱昇進の基準を下げたことが原因です。本当に相撲協会は稀勢の里関には甘く、読売新聞の記事によると、夏場所で稀勢の里関が14勝1敗だったら、優勝できなくても横綱に昇進させてよいのではないか、との意見が一部にあったようです。相撲協会はそれだけ「日本人」横綱を待望している、ということなのでしょう。率直に言って、普段は相撲にはたいして関心を抱いておらず、ろくに相撲を知らないのに、「ネトウヨ的風潮」を叩く好機とばかりに白鵬関への相撲協会・マスコミ・ファンからの非難を批判する「リベラル様」が想定しているであろう程ではないにしても、相撲協会・マスコミ・ファンに(人種差別撤廃条約的な意味での)人種差別的傾向があることは否定できないだろう、と思います。

 稀勢の里関は白鵬関より1年4ヶ月弱ほど遅く生まれたにすぎず(日本式に言えば2学年下となります)、年齢はさほど変わりません。白鵬関が全盛期より衰えているのは確かでしょうし、本人もそれを自覚しているのでしょうが(張り差しからのかち上げの多用も、衰えへの対応なのでしょうが、このように状況に応じての工夫を怠らないところが、大横綱たる所以でしょうか)、稀勢の里関も、一時よりは力が衰えているように思われます。ただ、琴奨菊関に先に優勝されてしまったことで精神面での変化があったのか、ここ2場所は以前よりも落ち着いて相撲をとれているようで、それが自身初の2場所連続の13勝につながっているのでしょう。

 かつて、北尾関が甘い基準で横綱に昇進したことがありましたが、北尾関が横綱昇進に挑んだ1986年名古屋場所の時点で、北尾関は間もなく23歳を迎えるのにたいして、一人横綱だった千代の富士関は31歳であり、相撲協会が若い横綱を待望していたのは、仕方のないところもあるとは思います。しかし、稀勢の里関の場合、白鵬関も含めて3人の横綱とさほど年齢が変わらず、大関としてはなかなか強いという程度の、優勝どころか優勝決定戦への進出経験もない、間もなく30歳になる力士なのですから、昇進基準を下げて横綱に昇進させようとする背景には、人種差別的傾向があると考えるべきでしょう。じっさい、マスコミでは、「日本人」横綱待望論が公然と語られています。

 次の横綱の最有力候補だった、稀勢の里関より5歳下の照ノ富士関が故障により以前の強さを取り戻せないかもしれないなか、残念ながら、現時点では大関陣で最も横綱に近いのが稀勢の里関であることは間違いないでしょう。関脇以下で近いうちに大関に昇進できそうな力士もいませんから、昇進も興行となる大相撲にとって、人材不足というか、かなり危機的な状況であることは間違いないと思います。その意味で、「日本人」横綱待望論からだけではなく、稀勢の里関に横綱昇進を期待する声が大きくなるのも、分からないではありません。しかし、3人の横綱とさほど年齢が変わらず、明らかに実績の不足している稀勢の里関を強引に横綱に昇進させるのは、個人的には大反対です。やはり、大関で2場所連続での優勝か、最低限、13勝以上での優勝決定戦の進出もしくは星一つの差での「準優勝」の翌場所に14勝以上で優勝することを、横綱昇進の必要条件としてもらいたいものです。

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この記事へのコメント

kurozee
2016年05月25日 13:44
稀勢の里の昇進基準についてはブログ主さんに同意ですが、日本人横綱を望むことがすべて人種差別的動機からとは言い切れないと思います。いわゆるスポーツナショナリズムはどの国民も持っていると思うし、これは国粋主義や人種差別とは区別すべきではないでしょうか。
2016年05月26日 00:20
すべてが人種差別的動機からとは言い切れない、と私も思います。

スポーツナショナリズムと国粋主義や人種差別との区別は、なかなか難しいとは思います。

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