『天智と天武~新説・日本書紀~』第90話「決闘」

 これは6月11日分の記事として掲載しておきます。『ビッグコミック』2016年6月25日号掲載分の感想です。前回は、行信が甥である淡海三船に仏像の光背と布・釘などを用意させたところで終了しました。今回は、雷雨のなか、行信が蘇我入鹿を象った仏像(現在では法隆寺夢殿に安置されている救世観音像)に、蘇我入鹿の怨霊よ、今からそなたを永久に閉じ込める、どんなに手を尽くして崇め奉っても祟るそなたが悪いのだ、もう自由のきかない身となる、ご覚悟なされよ、と力強く呼びかける場面から始まります。

 怯える三船にたいして、行信は仏像を厨子から降ろすのを手伝うよう、命じます。行信が三船の用意した道具を手に取ると、三船は自分の失態に気づきます。三船は光背を支える支柱を用意し忘れたのでした。日を改めるよう、三船は行信に進言しますが、行信は釘を手に取り、支柱がなくても釘さえあればよい、と言います。行信は、怨霊退散と叫びつつ、蘇我入鹿を象った仏像の後頭部に釘を打ち、穴を開けます。三船は、驚き怯えるあまり腰を抜かします。

 行信は、これは弔いだ、化粧を施してから送ってやる、と言います。行信は鉄製の曲がった金具を仏像の後頭部の穴に差し込み、光背を付けます。行信と三船は仏像に手を合わせた後、布で仏像を覆い、厨子に戻して鍵をかけ、仏像を封印します。行信は、二度と出てくるな、と怨霊に呼びかけます。やっと終わった、と安堵する三船に、この怨霊は強力なので、出て来ないよう永遠に見張らなければならない、と行信が力強く宣言するところで、今回は終了です。


 今回は、蘇我入鹿を象った仏像(現在では法隆寺夢殿に安置されている救世観音像)が封印される経緯が描かれました。これで、初回で描かれた、岡倉天心とフェノロサによる明治時代の調査とつながります。後は、行信の像が作られて、蘇我入鹿を象った仏像を永久に見張り続ける、という話になるのでしょうか。今回までの話を素直に解釈すると、行信は自分が祟り殺されることを覚悟のうえで、強力な怨霊を本気で鎮めようとした、ということになりそうです。

 しかし、行信は(三船も)「大怨霊」たる蘇我入鹿(聖徳太子)が祟るであろう天智天皇(中大兄皇子)の子孫であるだけではなく、入鹿の子孫でもあります。三船はともかく、行信はそのことをよく知っているでしょうから、入鹿を封印しようと単純に考えているだけではないような気もします。行信には三船にも明かしていない意図があるように思えてならないのですが、ではそれが何なのかというと、どうもよく分かりません。蘇我入鹿を象った仏像を、蘇我入鹿を敵視する藤原氏から守り続けるために大怨霊として封印した、というのが行信の真意ではないか、とも思います。

 予告は「勝敗の行方は・・・!?」となっており、次号で最終回とはならないようです。せっかく天智天皇(中大兄皇子)・天武天皇(大海人皇子)兄弟の「禁断の描写」により話題を呼んだらしいのに、このところずっと続いている「解決編」というか「行信編」がやや間延びした感もあるだけに、これでは、新規の読者層が離れていくのではないか、とやや心配になります。まあ、もうすぐ完結となりそうですから、今から本作の人気について心配しても意味がないのかもしれませんが。

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