複数回起きたかもしれないイヌの家畜化

 これは6月4日分の記事として掲載しておきます。イヌの家畜化についての研究(Frantz et al., 2016)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。『ネイチャー』のサイトにも解説記事が掲載されています。イヌは現在では絶滅したオオカミ集団から家畜化されたと言われていますが、いつどこでイヌの家畜化が始まったのか、議論が続いており、高い関心を集めています。イヌの起源地については、中央アジア・東アジア・ヨーロッパなどが候補として挙げられていますが、いずれにしても、イヌの家畜化は1回限りのことで、その年代は農耕開始前とされています。

 この研究は、14700~3040年前頃のイヌ59匹のミトコンドリアDNAと、アイルランド東岸のニューグランジ(Newgrange)遺跡で発見された4800年前頃のイヌの核DNAを解析し、現代の世界中のイヌおよびオオカミのDNAと比較しました。その結果、東アジアと西ユーラシアのイヌは14000年~6400年前頃に分岐した、と推定されました。これは、現時点でのヨーロッパと東アジアにおけるイヌの最初の確実な証拠とほぼ同時期か、数千年後のことです。また、ヨーロッパにおいては、14700~3040年前頃と現代とで、イヌのミトコンドリアDNAのハプログループの構成比に大きな違いがあることも明らかになりました。

 これらの遺伝的データと、中央アジアにおいて現時点ではイヌの最古の証拠がヨーロッパ・西アジア・東アジアよりも新しいことから、イヌはユーラシアの東西で農耕開始前に独立して家畜化されたのであり、後に東アジアから西ユーラシアへとイヌが人々に連れられて移動し、ヨーロッパでは東アジア系のイヌによる旧石器時代以来の在来イヌの大規模な置換が起きたのではないか、とこの研究では推測されています。しかし、この仮説の確証には、古代イヌのDNA解析を蓄積していく必要がある、とも指摘されています。イヌの起源についてはこれまでさまざまな仮説が提示されていますが、この研究はそれらを止揚するかもしれないという意味で、大いに注目されます。


参考文献:
Frantz LAF. et al.(2016): Genomic and archaeological evidence suggests a dual origin of domestic dogs. Science, 352, 6290, 1228-1231.
http://dx.doi.org/10.1126/science.aaf3161

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