井上寿一『終戦後史 1945-1955』

 これは9月21日分の記事として掲載しておきます。講談社選書メチエの一冊として、講談社より2015年7月に刊行されました。本書は、現代の日本の原型が形成された期間として1945~1955年を取り上げています。本書はその期間における戦前と戦後の連続と断絶の問題を検証しています。本書はまた、この時期には日本が現代とは異なる社会になった可能性があった、とも指摘しています。本書はそうした問題意識から、1945~1955年の日本を政治・外交・経済・社会・文化の視点で検証しています。

 特定の分野に重点を置いた解説とは異なり、多様な観点から1945~1955年の日本を検証する本書は、やや分かりにくかったというか、雑多ですっきりしないところがあったのは否めません。もっとも、これは私が不勉強な非専門家だからなのかもしれません。しかし、多様な観点からの戦後史の検証により、当時の人々のさまざまな価値観・思惑が浮き彫りにされているため、日本社会の多様性をじゅうらいよりも深く認識できたように思えるのは、有益でした。

 戦前と戦後の連続性は、とくに経済において強く指摘されています。戦前、とくに日中戦争以降に強化された統制経済的枠組みが戦後の日本経済をも律し、それが「グローバルな時代」においては日本経済の桎梏になっている、というような論調は、1990年代半ば以降、よく聞くように思われます。確かに、そうした経済面での戦前と戦後の連続性は否定できないように思います。本書では、戦前から続く統制経済志向とともに、そこから脱却して自由経済へ移行しようとする志向もあったことが指摘されています。

 もちろん、おそらく多くの日本人もそう考えているであろうように、戦前と戦後とは単純に連続していたわけではなく、断絶・変容した側面も多分にありました。本書は、占領期の日本において権力関係の逆転が生じていた、と指摘します。それは、資本家・男性・大人・都市に対する、労働者・女性・子供・地方の地位の相対的上昇である、と本書では指摘されています。いつの時代もそうですが、1945~1955年の日本についても、連続と断絶という観点が重要になるのでしょう。

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