アファレンシスの樹上生活への適応

 エチオピアで1974年に発見された有名な人類化石「ルーシー(Lucy)」の四肢骨を分析し、現代人やチンパンジーと比較した研究(Ruff et al., 2016)が報道されました。ルーシー(A.L. 288-1)はアウストラロピテクス属のアファレンシス(Australopithecus afarensis)に分類されており、その年代は318万年前頃と推定されています。アファレンシスの歩行形態が地上での直立二足歩行だったことは確実と考えられているものの、樹上生活にどれだけ適応していたのか、という問題については議論が続いています。ルーシーは比較的長い上肢を有しており、これは樹上生活への適応とも考えられるものの、単に祖先的特徴を保持しているだけで、じっさいの行動にはあまり反映されていなかった可能性も想定されます。この研究は、ルーシーの四肢骨のマイクロCTスキャンデータを用いて、現代人やチンパンジーと比較することにより、この問題を改めて検証しています。

 この研究は、ルーシーの大腿骨と上腕骨の強度比が現代人とチンパンジーの中間であり、現代人よりも前肢の負荷が大きいことから、ルーシーはかなりの時間を樹上生活に費やしていたのではないか、と推測しています。また、ルーシーの地上での直立二足歩行の歩行パターンは現代人と異なっており、ルーシーの地上での直立二足歩行は現代人よりもずっと非効率的だっただろう、と指摘されています。そのため、ルーシーの長距離歩行能力は現代人よりも劣っていただろう、と考えられています。ルーシーが樹上生活にかなりの時間を費やしていた理由としては、食べ物の獲得や捕食者からの防衛が想定されています。ルーシーは夜間に樹上生活を送っていたのではないか、というわけです。

 身体サイズと関連する全体的な筋力ではホモ属よりもルーシーの方が大きく、この点でルーシーは現代人よりもチンパンジーに近く、ルーシーは採食や防衛に関して、ホモ属よりも技術への依存度が低かっただろう、と指摘されています。こうしたことから、アウストラロピテクス属とホモ属との間で生態・行動の違いは大きかっただろう、とこの研究は推測していますが、一方で、ホモ属とはいっても、初期のハビリス(Homo habilis)とその後に出現したエレクトス(Homo erectus)以降では違っており、ハビリスとルーシーも含むアファレンシスやその他のアウストラロピテクス属との類似性が指摘されています。

 一方、エレクトス以降のホモ属は、地上での直立二足歩行についても、現代人との強い類似性が指摘されています(関連記事)。この研究は、ホモ属の進化において筋力の低下と脳の増大という交換(トレードオフ)が起き、それは技術の発達による必要な身体的物理力の低下と関連しているのではないか、との見通しを提示しています。この研究は、ルーシーの死因は木からの落下と推測する最近の研究(関連記事)とも整合的であり、この研究で改めて、アウストラロピテクス属までの人類は、地上での直立二足歩行も可能だったものの、樹上生活にもかなりの時間を費やしていた可能性が高い、と示されたように思います。


参考文献:
Ruff CB, Burgess ML, Ketcham RA, Kappelman J (2016) Limb Bone Structural Proportions and Locomotor Behavior in A.L. 288-1 ("Lucy"). PLoS ONE 11(11): e0166095.
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0166095

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