岩崎育夫『世界史の図式』

 これは1月29日分の記事として掲載しておきます。講談社選書メチエの一冊として、講談社より2015年11月に刊行されました。本書は、世界を大きくアジア・中東・ヨーロッパ・アフリカ・北アメリカ・ラテンアメリカ・オセアニアに7区分し、一つの地域世界が軍事・経済・文化的に優位となり(優位勢力)、その主導で歴史が展開してきた、との理解のもと、過去2000年の世界史を概観しています。本書は近現代において支配的だったヨーロッパ中心主義の克服を掲げ、ヨーロッパもこれら7地域世界の一つにすぎない、との視点を打ち出しています。

 本書は、これら7地域間の優位勢力の変遷という視点から、この2000年間の世界史を4期に区分しています。第1期は諸勢力間に大きな差のなかった7世紀半ば頃まで、第2期は中東が優位勢力となった7世紀半ばから15世紀末(イベリア半島からイスラーム勢力が駆逐された1492年)まで、第3期はヨーロッパが優位勢力となった16世前半から第一次世界大戦が終結した1918年まで、第4期は北アメリカが優位勢力となった第二次世界大戦後から現在までとなります。

 本書はこのようにこの2000年間の世界史を概観するのですが、正直なところ、世界史の概説として成功しているとは言い難いように思います。まず、ビザンツ帝国(東ローマ帝国)を中東と区分していることなど、地域区分にも疑問が残ります。また、ある時代・地域に詳しい人からすると、問題のある歴史認識も少なからず見られるのではないか、と思います。ただ、一人の執筆による一般向けの世界史概説なので、それらは大きな問題ではないように思います。

 もっと問題だと思うのは、中東が優位勢力とされている第2期についてで、これは中東という地域単位で把握するよりは、イスラーム勢力と考える方がはるかに妥当でしょう。また、第2期の中東は優位勢力とはいっても、世界中に強い影響力を及ぼした第3期のヨーロッパや第4期の北アメリカと比較すると、その影響力はかなり限定されているように思います。ヨーロッパ中心主義からの脱却を企図したのはよかったと思うのですが、結果的には、一般向けの世界史概説としてはあまり説得的でも魅力的でもないように思われます。率直に言って、再読することはおそらくないでしょう。

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