現代人の遺伝子発現におけるネアンデルタール人由来の遺伝子の影響

 これは2月28日分の記事として掲載しておきます。現代人の遺伝子発現におけるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)由来の遺伝子の影響に関する研究(McCoy et al., 2017)が報道されました。ネアンデルタール人と出アフリカ現生人類(Homo sapiens)集団とが交雑し、非アフリカ系現代人のゲノムにわずかながらネアンデルタール人由来の領域が存在することは、今では広く認められている、と言ってよいでしょう。そうした領域のなかには、たとえば脂質代謝に関わる遺伝子(関連記事)や免疫に関連する遺伝子(関連記事)などがある、と報告されています。しかし、ネアンデルタール人のRNAは回収されていないため、遺伝子発現に影響を及ぼす調節多様性については、よく分かっていませんでした。

 この研究は、RNA配列データセットにおける対立遺伝子に特有の発現を定量化し、ネアンデルタール人由来の遺伝子と現生人類型の遺伝子とが52の異なる組織においてどのように発現しているのか、検証しました。その結果、現代人の遺伝子発現におけるネアンデルタール人由来の遺伝子の効果は、身長や統合失調症または狼瘡への感染のしやすさなどといった特徴と関わっていることが明らかになっています。この研究でとくに注目されているのは、脳と精巣に関わる遺伝子に関しては、ネアンデルタール人由来の対立遺伝子の顕著な下方制御が見られる、ということです。ネアンデルタール人由来の変異が存在すると、細胞はメッセンジャーRNA(mRNA)の部分を除去するわけです。

 これについては、脳と精巣においてネアンデルタール人系統の遺伝子が現生人類系統にとって有害なため、排除されるようになった可能性が提示されています。ネアンデルタール人の系統と現生人類の系統とが70万年前頃に分岐した後、脳と精巣においてとくに急速な進化があったかもしれず、それが両系統の最大の違いではないか、というわけです。脳は認知能力、精巣は繁殖能力と直結するわけで、脳と精巣に関連する遺伝子に大きな選択圧が作用した可能性は高いと言えるでしょう。今後の研究課題として、種区分未定のデニソワ人(Denisovan)由来の遺伝子でも現代人の遺伝子の発現に影響があるのか否か、ということが挙げられており、研究の進展が期待されます。


参考文献:
McCoy RC, Wakefield J, and Akey JM.(2017): Impacts of Neanderthal-Introgressed Sequences on the Landscape of Human Gene Expression. Cell, 168, 5, 916–927.
http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2017.01.038

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