渡邊大門『おんな領主 井伊直虎』

 これは3月12日分の記事として掲載しておきます。中経の文庫の一冊として、2016年9月にKADOKAWAより刊行されました。大河ドラマ『おんな城主 直虎』関連本としては読んだのは本書で2冊目となります。以前に読んだ関連本(関連記事)は、門外漢にはかなり奇抜な内容に思えたので、もう一冊関連本を読むことにしました。中世~近世移行期にはまっていた十数年前ならば、もっと多くの関連本を読んだでしょうし、そうする方がよいに決まっているのですが、今は中世~近世移行期の優先順位が下がってしまったので、現在の能力・経済力・気力ではもう一冊読むのが限度といったところです。

 本書は大河ドラマ関連本として無難な内容になっており、安価で携帯性にも優れているので、私のように井伊直虎のことを手軽にもっと知りたいと考えている門外漢にとって、手頃な一冊になっていると思います。しかし、本書を読んで改めて思い知らされたのは、直虎(次郎法師)の生涯について確定的なことはほとんど分かっていない、ということです。確実な史料から人物像を推測することも難しいようです。そもそも、井伊家についても、直政以前の事績には不明なところが多く、本書も含めて今年の大河ドラマの関連本の著者は苦労しているのだろうな、と推察されます。

 まあそれでも、中世~近世移行期の「勝ち組」でも上位に位置するだろう井伊家は、まだ史料に恵まれているのかもしれません。井伊家のように一定以上重要な役割を果たした武士の家でも、まだほとんど史実が解明されていないような場合も珍しくないのでは、とも思います。本書は、井伊家について平安時代から室町時代にかけての動向にも簡潔に言及しつつ、戦国時代の井伊家を、関わりの深い周辺勢力の動向を取り上げつつ描き出しています。直虎についての一般向け解説としては、もっとも無難な構成と言えるでしょう。

 本書の描き出す戦国時代の井伊家の動向は、桶狭間の戦いや一族の謀殺や雌伏の時期や直政の代での飛躍など数々の起伏があり、優秀な作家ならば物語として面白くできそうだ、と思います。今年の大河ドラマは、現時点では視聴率が低迷しているようで、まあ確かに地味な感は否めませんが、本書を読むと、桶狭間の戦いの後の展開はかなり面白い物語になるのではないか、との期待も抱きたくなります。

 とくに、本書でも取り上げられている、後世の編纂史料では逆臣・佞臣とされる小野但馬がどのように描かれるのかは、大いに注目されます。今年の大河ドラマの小野但馬は、井伊直親(亀之丞)・主人公の直虎とともに、前半の主要人物とされています。第9回までの時点では、小野但馬は単純な悪人として造形されておらず、むしろ爽やかイケメンで屑の直親や狭い世界の厭らしさを体現している井伊家中との対比で、視聴者の同情を誘うように工夫されていると思います。小野但馬の今後と最期は、今年の大河ドラマ最大の見どころになりそうで、楽しみです。

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