絶滅した南米の有蹄動物のmtDNA解析

 絶滅した南アメリカ大陸の有蹄動物のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析に関する研究(Westbury et al., 2017)が公表されました。この研究が解析対象とした絶滅生物は、南アメリカ大陸で2万年前頃まで存在したと考えられている固有の有蹄動物マクラウケニア(Macrauchenia patachonica)です。マクラウケニアの進化史における位置づけに関しては、発見以来議論が続いてきました。マクラウケニアの子孫は現存しておらず、ラクダのような胴体とバクのような鼻を有しているといった風変わりな形質の組み合わせのため、古典的な分類学による分類法では対応できなかったからです。これまで、古代のコラーゲンに由来するタンパク質のアミノ酸配列の解析結果から推定された系統樹が最も正確なものと考えられていました。マクラウケニアのDNA解析も試みられてきましたが、DNAの劣化と近縁種に由来する標準ゲノムのないことが妨げとなっていました。

 この研究は、新しい塩基配列解読技術とマッピング技術を用いて、マクラウケニアの化石試料より採取された古代のDNAからミトコンドリアゲノムを組み立て、こうした問題点を克服するとともに、このDNA塩基配列を系統発生解析に用いて、マクラウケニアの進化的関係を評価しました。その結果、マクラウケニアを含む滑距目がウマ・バク・サイなど奇蹄目の姉妹分類群であることを示すプロテオミクスの証拠が裏づけられ、これらの分類群の分岐が約6600万年前だと明らかになりました。この研究は、近縁な現生種による標準ゲノムがなくても古代のゲノムを復元できることを実証しているものの、この他の南米固有の有蹄動物の進化的関係を解明するためには、さらなる研究が必要だと指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【進化】ダーウィンの「最も奇妙な動物」を進化系統樹上で位置づける

 絶滅した南米在来の有蹄動物Macrauchenia patachonicaのほぼ完全なミトコンドリアゲノムについて報告する論文が、今週掲載される。チャールズ・ダーウィンが最初に化石を発見して以来生物学者の頭を悩ませてきた動物群の進化的関係に関する手掛かりが、この古いDNAによってもたらされた。

 M. patachonicaの子孫は現代に生き残っておらず、風変わりな形質の組み合わせ(例えば、マクラウケニアはラクダのような胴体とバクのような鼻を持っている)のために古典的な分類学による分類法では対応できない。これまでのところ、古代のコラーゲンに由来するタンパク質のアミノ酸配列の解析結果から推定されたM. patachonicaと現生哺乳類の関係が最も正確なものと考えられている。これまでに古代のDNAを使ってM. patachonicaの進化史の解明を進める試みがなされてきたが、DNAの劣化と近縁種に由来する標準ゲノムのないことが障害となっていた。

 今回、Michael Hofreiterたちの研究グループは、新しい塩基配列解読技術とマッピング技術を用いて、マクラウケニアの化石試料から採取された古代のDNAからミトコンドリアゲノムを組み立てて、こうした問題点を克服した。そしてHofreiterたちは、このDNA塩基配列を系統発生解析に用いて、マクラウケニアの進化的関係を評価した。その結果、滑距目(マクラウケニアを含む)が奇蹄目(ウマ・バク・サイ)の姉妹分類群であることを示すプロテオミクスの証拠が裏付けられ、これらの分類群の分岐が約6600万年前に起こったことが明らかになった。

 今回の研究は、近縁な現生種による標準ゲノムがなくても古代のゲノムを復元できることを実証している。しかし、この他の南米固有の有蹄動物の進化的関係を解明するためには、さらなる研究が必要となっている。



参考文献:
Westbury M. et al.(2017): A mitogenomic timetree for Darwin’s enigmatic South American mammal Macrauchenia patachonica. Nature Communications, 8, 15951.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms15951

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