当初の想定より新しいネルハ洞窟の壁画の年代

 これは8月30日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのが遅れましたが、スペイン南部の海岸に近いネルハ洞窟(Nerja cave)で発見された壁画の年代に関する研究(Sanchidrián et al., 2017)が報道されました。ネルハ洞窟(これまでこのブログではネルジャ洞窟と表記してきましたが、この機会にネルハと訂正します)の壁画については、当初の推定年代が43500~42300年前頃だったことから、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の所産の可能性があるということで、これまでこのブログで何度か言及してきました。そうだとすると、ネアンデルタール人は壁画を残さなかった、とする通説を覆すことになるからです。
http://sicambre.at.webry.info/201202/article_9.html
http://sicambre.at.webry.info/201202/article_10.html
http://sicambre.at.webry.info/201202/article_17.html
http://sicambre.at.webry.info/201207/article_25.html
http://sicambre.at.webry.info/201502/article_4.html

 この研究は、ネルハ洞窟の壁画の黒い図の放射性炭素年代測定結果を提示しています。この研究は、黒い図に用いられた針葉樹の炭2点だけではなく、一方の図(black mark 1)の上下の炭酸塩堆積物の年代も測定しました。炭酸塩堆積物の年代測定にさいしては、炭素14の存在しない化石炭素(dead carbon)の割合が考慮されました。炭の年代は、一方が15790±460年前(信頼度95.4%の較正年代で20240~18096年前)、もう一方が15650±300年前(信頼度95.4%の較正年代で19671~18287年前)です。一方の図の上下の炭酸塩堆積物の推定年代は、下部では20790±90年前(信頼度95.4%の較正年代で、化石炭素の割合が0%だと25939~24646年前、20%だと23126~22592年前)、上部では12150±40年前(信頼度95.4%の較正年代で、化石炭素の割合が0%だと14621~14078年前、20%だと12592~12398年前)となります。図に由来する炭の年代と、その上下の炭酸塩堆積物の年代は整合的です。

 この研究は、こうした年代測定結果から、ネルハ洞窟の壁画は上部旧石器時代の早期マグダレニアン(Magdalenian)の時代に描かれたものだろう、と推測しています。つまり、ネルハ洞窟の壁画はネアンデルタール人ではなく現生人類(Homo sapiens)の所産である可能性がきわめて高い、というわけです。ネアンデルタール人が壁画を描いていたとしたら面白いな、と思っていたのですが、やはり長年大前提とされてきた通説が覆されるようなことはなかなかないものです。ネアンデルタール人が壁画を描いていた可能性はきわめて低いのでしょうが、私は諦めが悪いので、まだ期待している気持ちも残っています。


参考文献:
Sanchidrián JL. et al.(2017): New perspectives for 14C dating of parietal markings using CaCO3 thin layers: An example in Nerja cave (Spain). Journal of Archaeological Science: Reports, 12, 74–80.
https://doi.org/10.1016/j.jasrep.2017.01.028

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