中山一大・市石博明編集『つい誰かに教えたくなる人類学63の大疑問』

 これは10月15日分の記事として掲載しておきます。日本人類学会教育普及委員会監修で講談社より2015年11月に刊行されました。本書は、人類学に関する63の話題を解説するという構成になっています。各解説は、高校教師が各分野の専門家に取材して執筆しており、おおむね最新の研究成果も踏まえた堅実な内容になっています。未解明な点を安易に断定しないよう心がけている編集方針が窺え、良心的な内容になっていると思います。ある程度予備知識が必要かもしれませんが、分かりやすい解説になっていますし、病気・食事・心理・生殖など身近な話題多く取り上げられているので、一般層が興味深く読み進められるのではないか、と思います。

 本書の刊行は2年前ですが、それでもやや古くなっている解説もあるのが、人類学の恐ろしさでもあり面白さでもあると思います。たとえば、インドネシア領フローレス島のリアンブア(Liang Bua)洞窟遺跡で発見されたホモ属化石群であるフロレシエンシス(Homo floresiensis)の年代は21500年前とされていますが、本書刊行の翌年(2016年)の研究では、フロレシエンシス遺骸の下限年代は6万年前頃、フロレシエンシスの所産と考えられる石器群の下限年代は5万年前頃と見直されました(関連記事)。

 専門家への取材のうえで執筆されているだけに、単純化された俗流解説になっていないのは、一般向け書籍としてたいへんよいと思います。たとえば、霊長類の視覚機能において、3色型が2色型より優れているとは単純には言えず、2色型が進化の過程で淘汰されなかったことにも理由がある、との解説はなかなか丁寧で、一般層には読みごたえがあったのではないか、と思います。本書のような良書が広く読まれ、続編が刊行されることを期待しています。


参考文献:
中山一大・市石博明編集(2015) 『つい誰かに教えたくなる人類学63の大疑問』(講談社)

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