ヨーロッパの初期農耕民と狩猟採集民との関係

 これは11月14日分の記事として掲載しておきます。ヨーロッパの初期農耕民と狩猟採集民との関係についての研究(Lipson et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。古代DNA研究から、ヨーロッパの初期農耕民はアナトリア半島からヨーロッパへと移住してきた、と明らかになっています。しかし、ヨーロッパ新石器時代の農耕民と狩猟採集民との関係については、交雑の程度や時空的な違いなど、明らかになっていないことも少なくありません。

 この研究は、新石器時代~銅器時代のハンガリー・ドイツ・スペインの人類遺骸標本から得られた、高解像度のゲノム規模のデータセットを用いて、農耕民と狩猟採集民との関係を時間的・地域的に検証しています。用いられた標本は180人分で、そのうち130人分はこの研究で新たに報告されるものです。内訳は、ハンガリーが紀元前6000~紀元前2900年の100人分、ドイツが紀元前5500~紀元前3000年の42人分、スペインが紀元前5500~2200年の38人分となります。

 分析の結果明らかになったのは、ヨーロッパ在来の狩猟採集民が、アナトリア半島からヨーロッパへと移住してきた初期農耕民にゆっくりと同化されていったことです。新石器時代の農耕民が在来の狩猟採集民を駆逐したわけではなく、長期の共存期間があった、というわけです。ヨーロッパの新石器時代農耕民に見られるヨーロッパ在来の狩猟採集民の遺伝的影響は高水準ではないものの、時間の経過とともに増加していったようです。

 また、ヨーロッパの各地域の初期農耕民は、その地域の狩猟採集民とのみ交雑し、他地域の狩猟採集民または農耕民とは交雑しない傾向にあったことも明らかになりました。ヨーロッパの初期農耕民は、一度定住したらその地に留まる傾向にあったようです。ヨーロッパは環境的に古代DNA研究に適した地域でもあるので、このような詳細な解析が可能という側面もあり、ただちに同程度の水準の解析が他地域でも可能というわけではないとしても、今後他地域でも同様の研究が進展することを期待しています。


参考文献:
Lipson M. et al.(2017): Parallel palaeogenomic transects reveal complex genetic history of early European farmers. Nature, 551, 7680, 368–372.
http://dx.doi.org/10.1038/nature24476

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