家近良樹『西郷隆盛 維新150年目の真実』

 これは12月17日分の記事として掲載しておきます。NHK出版新書の一冊として、NHK出版から2017年11月に刊行されました。来年(2018年)の大河ドラマ『西郷どん』の主役である西郷隆盛について予習しておこうと思い、読んでみました。著者は、ミネルヴァ日本評伝選で本格的な西郷隆盛の伝記を著しており、そちらを読むべきなのでしょうが、今はそこまでの気力がないので、余裕ができたら読んでみよう、と思います。著者は本書において、ミネルヴァ日本評伝選で触れられなかった問題を中心に取り上げた、とのことです。

 西郷隆盛の通俗的な人物像は、小さなことには拘泥しない、度量の大きい清廉な大英雄、といったところでしょうか。しかし本書は、西郷隆盛が敵と味方を峻別し、敵と認識した相手には心を閉ざすようなところもあった、と指摘しています。じっさい、西郷隆盛を間近で見ていた人のなかでは、「抹殺博士」と呼ばれた重野安繹が、西郷隆盛は狭量だった、と証言しているそうです。本書は、西郷隆盛は本来激情の人で、困窮生活や二度の島流しなどといった試練を経て、人格を陶冶していったのではないか、と推測しています。本書は、とくに二回目の島流しを重視しており、これ以降の西郷隆盛は、大人物としての風格を備えていたものの、「本性」を修練で隠すことにもなり、複雑な印象を周囲・後世に与えたのではないか、とも推測しています。

 本書は、西郷隆盛の人物像とともに、そもそもなぜ薩摩藩が幕末に重要な役割を果たしたのか、という観点を提示し、幕末の大きな流れのなかに西郷隆盛を位置づけようとしており、西郷隆盛を通じた幕末の解説という側面もあります。島津久光など、西郷隆盛と敵対的な人物についても、公平に取り上げようとしていることが本書の特徴で、大河ドラマ関連本にありがちな、たんなる西郷隆盛賛美になっていないことはよいと思います。西郷隆盛についてある程度の基礎知識は必要でしょうが、来年の大河ドラマの入門書としては優れていると思います。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック