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zoom RSS 更科功『絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか』

<<   作成日時 : 2018/01/21 00:00   >>

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 これは1月21日分の記事として掲載しておきます。NHK出版新書の一冊として、NHK出版から2018年1月に刊行されました。本書は、ヒト(現代人)の変わった特徴はなぜ進化したのか、人類のなかでなぜヒトだけが生き残ったのか、という観点から人類進化史を検証しています。本書は、初心者向けの人類進化史の概説というよりは、ある程度人類進化について知った一般層が、さらに詳しく知るために読むべき手がかりという位置づけのように思われます。本書は近年までの研究成果を踏まえつつ、興味深い論点を検証しており、人類進化史の(第二段階的な)入門書として、良書になっていると思います。

 本書は、ヒトが現生種のなかで特別な存在とも言えるところがある理由として、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)などの他のホモ属各種や、それ以前に存在したアウストラロピテクス属各種など、ヒトの近縁種が絶滅したことを挙げています。近縁種がことごとく絶滅してしまったので、現生種のなかでヒトは特異的なところのある存在になった、というわけです。ヒトを相対化するようなこの視点は、たいへん重要だと思います。また、脳は大きければよいものでもない、といった指摘など、通俗的な進化観を念頭に置いた批判的解説もあり、一般層向けへの配慮も窺われることも、なかなかよいと思います。

 本書はホモ属出現前にもかなりの分量を割いています。人類進化史において占める期間を考えれば妥当と言えるかもしれませんが、ホモ属出現前の人類進化史はそれ以降と比較して圧倒的に証拠が少ないだけに、これは大胆な配分と言えるかもしれません。本書はそれだけ、ヒトを特異的な存在とするにいたった特徴、とくに直立二足歩行の進化を重視しており、どのような選択圧で進化していったのか、さまざまな仮説を取り上げつつ、検証しています。もっとも、この問題は証拠の少なさからまだ確定的なことは言えない状況ですので、今後の研究の進展が期待されます。

 本書は近年までの研究成果を踏まえつつ人類進化史を解説しているので、大きな違和感はとくにありません。一つ、異議を唱えるというわけではないとしても、別の可能性もあるかな、と考えたのは、第3章の犬歯の縮小の問題です。本書では、人類系統の犬歯の縮小は雄同士の戦いが穏やかになったことの表れとされていますが、闘争のさいに、直立二足歩行により可能となった石や木などの使用が、鋭い犬歯の使用より効率的だったため、犬歯を縮小させるような多様体が定着した、とも考えられるように思います。犬歯の使用には密着しなければなりませんが、石や木の使用では、そこまで密着しなくとも相手に打撃を与えることが可能です。石を投げれば、さらに安全に相手に打撃を与えられます。もっとも、初期人類の投擲能力は、現代人というか異論の余地のほぼないホモ属以降と比較して、かなり劣っていたかもしれませんが(関連記事)。


参考文献:
更科功(2018)『絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか』(NHK出版)

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