アフリカ北部の15000年前頃の現生人類のDNA解析

 これは3月20日分の記事として掲載しておきます。アフリカ北部の15000年前頃の現生人類のDNA解析に関する研究(Loosdrecht et al., 2018)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。日本語の解説記事もあります。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、モロッコのタフォラルト(Taforalt)の近くにあるピジョン洞窟(Grotte des Pigeons)で、ビーズや動物の骨が供えられて埋葬されていた現生人類(Homo sapiens)のDNAを解析しました。年代は15000年前頃で、これはアフリカの人類の古代DNA解析としては最古の事例となります。この現生人類集団は、考古学的文化としては、洗練された石の鏃や尖頭器を用いるイベロモーラシアン(Iberomaurusian)に分類されています。イベロモーラシアンは、以前にはヨーロッパ起源と考えられていました。イベロモーラシアンの細石刃は、先行するヨーロッパのグラヴェティアン(Gravettian)起源ではないか、というわけです。

 埋葬されていた現生人類のうち、5人の核DNAと7人のミトコンドリアDNA(mtDNA)が解析されました。その結果、15000年前頃のイベロモーラシアン集団には更新世のヨーロッパの現生人類からの遺伝的影響は見られず、そのゲノムの2/3は西アジアの14500~11000年前頃の文化であるナトゥーフィアン(Natufians)の担い手と、1/3はサハラ砂漠以南のアフリカの未知の現生人類系統との類似性が見られました。このサハラ砂漠以南のアフリカの未知の現生人類系統は、アフリカ西部の現代人およびタンザニアのハザ(Hadza)族との類似性が認められるものの、一致しているわけではなく、現在でも子孫は残っているとしても、その遺伝的構成はほぼ失われてしまった可能性も提示されています。

 イベロモーラシアンはナトゥーフィアンに先行しますが、ナトゥーフィアン集団にはアフリカからの遺伝的影響が見られず、イベロモーラシアン集団がナトゥーフィアン集団の直接的祖先というわけではありません。両集団はアフリカ北部または西アジアに15000年以上前に存在したより大きな集団から共通の遺伝的影響を受けたのではないか、と推測されています。本論文は、アフリカ北部・西アジア・サハラ砂漠以南のアフリカの間では、更新世にじゅうらいの想定よりも多くの現生人類の移動があったのではないか、と指摘しています。


参考文献:
Loosdrecht M. et al.(2018): Pleistocene North African genomes link Near Eastern and sub-Saharan African human populations. Science, 360, 6388, 548-552.
http://dx.doi.org/10.1126/science.aar8380

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