ネアンデルタール人による地中海航海

 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)による地中海航海の可能性について報道されました。航海が可能だったのは現生人類(Homo sapiens)のみ、と長い間考えられてきましたが、それは今でも有力説と言えるでしょう。また、食料を積み込んでの遠洋航海は農耕・牧畜の開始以降と考えられてきました。海洋を横断した直接的証拠は、4000年前頃のインドからアラビア半島の航海まで確認されていません。現生人類ではない系統の人類による渡海の事例はインドネシア領フローレス島で確認されており、100万年以上前までさかのぼりますが、それは航海ではなく津波による漂着の可能性が指摘されています(関連記事)。

 近年になって、地中海で現生人類ではない系統の人類、具体的にはネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)による航海の可能性が指摘されています。過去500万年以上にわたって大陸と陸続きではなかったクレタ島南西部のプラキアス(Plakias)地域で13万年前頃の石器が発見されていますが(関連記事)、年代は曖昧だったので、疑問視する研究者は多いようです。このクレタ島の13万年前頃の石器群には、掻器(scrapers)や鉈状石器(cleavers)や両面加工石器(bifaces)などが含まれており、アシューリアン(Acheulean)と分類されていて、ネアンデルタール人が製作した、と推測されています。

 南部イオニア諸島のレフカダ島(Lefkada)・ケファロニア島(Kefallinia)・ザキントス島(Zakynthos)において、合計15ヶ所の中部旧石器時代~中石器時代の開地遺跡が発見されており、このうちレフカダ島の4遺跡・ケファロニア島の3遺跡・ザキントス島の3遺跡が中部旧石器と分類されています。これらは全て中部旧石器時代の開地遺跡で、典型的なムステリアン(Mousterian)とされています。後期第四紀においても南部イオニア諸島はギリシア本土(ヨーロッパ大陸)とは地続きではなく、ギリシア本土やイタリアの中部旧石器との類似性から、ネアンデルタール人による南部イオニア諸島への航海の可能性が指摘されています(関連記事)。

 さらに、今月(2018年4月)のアメリカ考古学協会の会議での発表でも、ネアンデルタール人による航海の可能性が指摘されたそうです。ギリシアのナクソス島(Naxos)のステリダ(Stelida)などで、ネアンデルタール人の製作と思われる握斧や石刃などの石器が確認されました。ナクソス島はクレタ島の北方250kmのエーゲ海に位置し、更新世の寒冷期にも大陸と陸続きにはならなかった、と推測されています。これらの握斧や石刃はムステリアンとの類似性が指摘されています。石器の年代は現在測定中とのことで、詳細な情報は語られませんでしたが、よく層序化された地層で発見されたので、年代の信頼性は高いものになるだろう、とのことです。現生人類ではない系統の人類による航海については、今後の研究の進展がたいへん楽しみです。

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