新生仔期の腸内微生物相の組成

 新生仔期の腸内微生物相の組成に関する研究(Fulde et al., 2018)が公表されました。腸内微生物相の変化は、罹患者数がひじょうに多い複数の免疫介在性疾患や代謝疾患と関連があり、また、糞便移植などの実験から、そのような変化はこれらの病態の少なくとも一因を担っている、と示されています。出生後の時期は、微生物相の組成や宿主と微生物の相互作用、免疫恒常性の発達にとってとくに重要です。しかし、この新生児のプライミング期の根本的な分子機構は明らかにされていません。本論文は、宿主を介した細菌の定着の調節回路を特定し、これが早期新生仔期だけで働くにもかかわらず、微生物相の組成に生涯にわたって影響を与えることを報告します。

 本論文は、新生仔マウスの腸上皮において、フラジェリン受容体のToll様受容体5(TLR5)が日齢依存的に発現する、と明らかにしました。細菌定着の競合実験により、上皮のTLR5を介したREG3γ産生が、有鞭毛細菌の定着を妨げるように働く選択においてひじょうに重要である、と示されました。野生型およびTlr5欠損の無菌マウスについて、新生仔と成体で行なった微生物相移植の比較実験では、新生仔期のTLR5の発現が、生涯を通した微生物相の組成に強く影響する、と明らかになりました。このように、成体宿主における有益な微生物相は、乳仔期の早期に形成されます。これは、ヒトで乳児期早期に微生物相の成立を乱す環境因子が、成人期における免疫恒常性や健康に影響を与え得ることの説明になるかもしれません。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


微生物学:Toll様受容体5による新生仔期での選択が長期にわたって腸内微生物相の組成に影響を与える

微生物学:成体の腸が微生物相を獲得する仕組み

 出生後の時期は、微生物相や免疫恒常性の発達にとって特に重要な役割を果たしているが、この新生児のプライミング期に細菌群集の組成を形作る機構はよく分かっていない。今回、マウス新生仔の腸上皮において、免疫受容体であるTLR5が日齢依存的に発現し、これが有鞭毛細菌を排除するように働く選択を誘導して、生涯にわたる微生物相の組成に影響を与えることが報告されている。この研究は、個体の健康に重要な成体の腸内微生物相の組成が、乳児期早期に形成され得る機構の一端を明らかにしている。



参考文献:
Fulde M. et al.(2018): Neonatal selection by Toll-like receptor 5 influences long-term gut microbiota composition. Nature, 560, 7719, 489–493.
https://doi.org/10.1038/s41586-018-0395-5

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