飯倉章『1918年最強ドイツ軍はなぜ敗れたのか ドイツ・システムの強さと脆さ』

 文春新書の一冊として、文藝春秋社より2017年12月に刊行されました。本書は第一次世界大戦におけるドイツの敗北を検証しています。第一次世界大戦でドイツは最終的に敗北し、帝政は崩壊したのですが、西部戦線ではイギリスとフランス、東部戦線ではロシアを相手に4年以上戦い、時に大勝することもありました。もっとも、ドイツは当時まだ(かろうじて)大国の一つだったオーストリア=ハンガリー帝国と、かつての大国だったオスマン帝国と同盟関係にありましたし、1917年の革命で混乱したロシアでは、最終的に権力を掌握したボリシェヴィキ政権がドイツと講和しましたが、それを考慮に入れても、イギリス・フランス・ロシアを相手に4年も戦い続けたドイツの強さは驚異的だと思います。

 本書は、ドイツの強さには「ドイツ・システム」があり、それは脆さにもなっていて、EUで「ドイツの独り勝ち」とも言われる現代にも、「ドイツ・システム」に起因する強さと脆さが同居している、と指摘しています。しかし、ドイツ史に疎い私からすると、家父長制的な権威主義文化に起因する「ドイツ・システム」の強さと脆さとはいっても、正直なところ、俗流的な比較文化論の枠組みにあるのではないか、と思えました。本書は、現代ドイツのサッカー代表チームに関しても「ドイツ・システム」で説明しており、サッカーにまったく興味がなく(ただ、競技自体には興味がありませんが、利権・腐敗構造にはそれなりに関心があります)、高校までの体育の授業での経験から大まかなルールを知っている程度の私にとっては、本書の見解の妥当性がどの程度のものなのか、判断できないのですが、サッカーに詳しい読者はどのように考えるのでしょうか。

 本書は、プロイセン主導による統一ドイツ帝国(とはいっても、オーストリアは除外されているわけですが)の支配構造として、皇帝(国王)・首相・参謀総長のトライアングルという図式を提示し、これが第一次世界大戦後半には崩れてしまい、ドイツの敗戦へとつながった、との見通しを提示しています。しかし、正直なところ、このトライアングルの成立から安定期を経て崩壊期にいたるまで、「ドイツ・システム」という本書の提示する枠組みでの説明が、成功しているようには思えませんでした。確かに、第一次世界大戦におけるドイツの判断の過ちは興味深い事例ではあるものの、本書の解説からは、かなりの程度普遍的な失敗でもあるように思えました。色々と不満を述べてきましたが、ドイツ視点の第一次世界大戦史の一般向け書籍としては、本書は当たりだと思います。

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