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zoom RSS 『卑弥呼』第2話「ヤノハとモモソ」

<<   作成日時 : 2018/09/20 18:52   >>

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 『ビッグコミックオリジナル』2018年10月5日号掲載分の感想です。初回に続いての巻頭カラーとなります。前回は、日向(ヒムカ)の国から暈の国へと移住して戦士(戦女)見習いとなったヤノハが、未来が見えると言うモモソと出会うところで終了しました。今回は、暈の国にある「日の巫女」集団の学舎である種智院で、ヤノハが木製の棒で剣術の訓練をしている場面から始まります。ヤノハは相手を圧倒し、戦部の女性たちはヤノハの強さに恐れと驚きを感じます。戦部の師長であるククリは、敵の小指か足の指を切ってとどめを刺すという剣技が日向にあると聞いたが、初めて見た、とヤノハを褒めます。

 そのヤノハに、前回、捔力(すもう)の訓練で殺されそうになったヌカデが近づき、早死にするぞ、戦柱(イクサバシラ)だ、と忠告します。しかし、暈に来たばかりのヤノハは、戦柱と言われても何のことか分からず、ヌカデは説明を続けます。技量抜群の戦女(イクサメ)は初陣が特別に早く、それは天照大御神に伺いを立てるためです。柱とは生贄のことで、強さに加えて天照大御神の恩寵があるのか、実戦で試される、というわけです。先陣もしくは単独での切込みを命じられる、ということでしょうか。戦柱に選ばれれば大抵は戻ってこない、とヌカデに教えられたヤノハはさすがに衝撃を受けたようです。

 そこへ、祈祷部(イノリベ)の巫女の見習いたちが現れ、見習いのくせに特別扱いで、我々より食事も早いのか、とヌカデは不満を漏らします。見習いたちの先頭を歩いていたモモソは、ヤノハに気づくと微笑みます。ヤノハはヌカデに、モモソについて尋ねます。ヌカデによると、モモソは4歳の時に「日の巫女の長」であるヒルメの後継者に選ばれ、特別な霊力を持ち、百年に一度の逸材と謳われている、とのことです。ヌカデはヤノハに、お前もモモソのような霊力があれば戦場に行かずともすむのになあ、と皮肉な様子で語りかけます。

 食事の時間となり、戦女見習いたちのいる場所とは布で仕切られた一方の部屋で、祈祷部の巫女の見習いたちも食事をとっていました。戦女見習いたちの食事は、魚や果物らしきものもあり、悪くはないと思います。まだ庶民の食事が描かれていませんが、庶民よりはかなり恵まれた食事のように思います。ヤノハが先輩らしき戦女見習いの一人に、巫女の見習いたちの食事は我々より上等なのか、と尋ねると、豊富な果物に蜜や蘇(乳製品の一種でしょうか)もある、と返答があります。しかし、先輩らしき戦女見習いによると、祈祷部の見習いたちは穢れを避けるため肉も魚も食べないそうです。先輩らしき戦女見習いたちは次々と、新人のヤノハに戦女の心得を教えます。戦女は、巫女を守るため太く短く力強く生き、結果として戦場で虫けらのように果てる身です。一方、巫女たちは天照大御神のため長生きする定めとなっています。

 守る側より守られる側になりたい、とぼやく先輩の一人に、戦部の長はどこまで偉くなれるのか、とヤノハは尋ねます。先輩たちの話によると、戦部では武勲を立てても須恵部(スエベ)や形部(オサカベ)と同じく精々5番目の冠位の赤までしか昇進できないのに、祈祷部見習いは最初から赤衣で、逆立ちしても適わない、とのことです。しかし、先輩たちによると、戦部の者は年季が明ければ男と交われるものの、祈祷部の巫女たちはそれが一生禁じられており、露見すれば死罪、口吸い(接吻)でも追放とのことです。先輩たちは、自分たちの人生の方が気楽でよいかもしれない、と言って笑います。戦部の者は祈祷部に上がれないのか、とヤノハに尋ねられた先輩たちは、天照大御神が憑依するとまではいかずとも、声が聞こえるなどすれば別だが、それを日の巫女の長が認めるのが条件で、偽りと分かれば死罪だ、と説明します。

 訓練が終わったと思われる後、ヤノハが一人で建物の屋根にいると、モモソが上がってきます。モモソは、まだヤノハの名前を知らなかったので、名前を尋ねます。モモソ様とヤノハに呼びかけられたモモソは困惑し、なぜそう呼ぶのか、とヤノハに尋ねます。祈祷部の見習いのモモソは戦部より上の冠位だからだ、とヤノハが返答すると、自分はただの見習いだ、とモモソは言います。見習いでも祈祷女で、自分とは住む世界が違う、と言うヤノハにたいして、私は住む世界も冠位も信じない、とモモソは言います。

 毎日何を学んでいるのか、とヤノハに尋ねられたモモソは、一年間ずっと、「お暈(ひがさ)さま」の動き(太陽の運行ということでしょうか)を観察し、漢字と神の言葉である阿比留(アビル)文字も学んでいる、と答えます。モモソは、倭国の形や、暈以外の国々の名称と場所がどこにあるのか、といった地理も学んでいました。山杜(ヤマト)についてヤノハに尋ねられたモモソは、山杜で祈りを捧げる方が倭国の支配者になる、と説明します。山杜の王はそんなに強いのか、とヤノハに尋ねられたモモソは、王ではなく神に選ばれた方だ、と答えます。

 今の山杜の支配者は日見彦(ヒミヒコ)様で、鞠智彦(クコチヒコ)という将軍が守っている、とモモソはヤノハに説明します。日見彦とは暈の国のタケル王のことか、とヤノハに尋ねられたモモソは、天照大御神が、男子に降れば日見彦、女子に降れば日見子(ヒミコ)と答えます。日見彦と日見子は日の巫女の長であるヒルメより偉いのか、とヤノハに尋ねられたモモソは、ヒルメは祭祀の頂点にいるがただの人で、日見彦や日見子は生き神だ、と答えます。日見彦がタケル王だとすると、日見子はどこにいるのか、とヤノハに尋ねられたモモソは、この百年顕われていない、と答えます。

 祈祷女が羨ましい、戦部に守られて長く生きられる、と言うヤノハに、そんなに死にたくないのか、とモモソは尋ねます。ヤノハは力強く、自分の一番の望みはこの世で天寿を全うすることだ、と答えます。一方、モモソは、自分は短くてもよいから人の世を楽しみたい、と言います。モモソの視線の先に男性がいることに気づいたヤノハは、種智院にいる見習いの女性にとって男性は珍しいのだろう、とモモソに指摘します。種智院には基本的に女性しかおらず、柵の外に十数名の男性がいるだけです。ヤノハは、モモソの視線の先にいた男性がホオリだと教え、話してみたいか、と尋ねます。ヤノハは動揺するモモソにたいして、お前はいずれ日の巫女の長になる身なのに、一度も男と話したことがないのはだめだ、と指摘します。するとモモソは、一度話すだけでよい、と恥じらいながら言います。その晩(だと思います)、ヤノハはホオリを誘惑し、モモソと会わせる手筈を整えます。ホオリは初めて会った時からヤノハを気に入っていたので、ヤノハの依頼をあっさりと聞き入れます。ヤノハは、自分の依頼を聞き入れてくれたら自分との交わりを許してやる、とホオリに約束していました。翌日、ホオリとモモソは密会し、二人は接吻します。その様子をヤノハは満足そうに見ていました。

 モモソはヤノハに感謝し、どう恩を返せばよいのか、と尋ねます。自分は戦部の見習いの中で最も腕が立つので戦柱として戦場に送られるが、大抵の戦柱は無残に死ぬので、自分を戦場に送らないようにヒルメ様に進言してほしい、とヤノハはモモソに頼みます。どのような理由をつけるのか、とモモソに尋ねられたヤノハは、天照大御神の声が聞こえるようだと言ってくれればよい、と答えます。本当に天照大御神の声が聞こえるのか、とモモソはヤノハに尋ねますが、ヤノハは即座に否定します。するとモモソはヤノハに謝り、それだけはできない、と言います。しかし、ヤノハはこの答えを予想していたのか、動揺することなく、モモソがホオリと接吻(口吸い)したことを黙ってやる、と交換条件を提示します。口吸いは日の巫女の長の後継者でも追放だろう、とヤノハに指摘されたモモソは怒りますが、ヤノハは冷静にモモソを諭します。この乱世で生き抜くには誰かの助けが必要で、モモソが日の巫女の長となっても、千人の巫女を一人で束ねていけるのか、というわけです。自分は役に立つので味方にしろ、二人で力を合わせて戦乱の世を乗り切ろう、とヤノハに迫られたモモソが、覚悟を決めた表情で了承し、この時点から先のヤノハが、ここまでは自分の思い通りに事が運んでいた、と回想するところで今回は終了です。


 今回は、ヤノハとモモソの関係を中心に話が進みました。ここまではヤノハ視点で話が進んでいますが、ヤノハとモモソの二人が主人公のようにも思えますから、今後もこの二人が中心となって話が進みそうです。作中世界では弥生時代に阿比留文字が使われているようで、まずい方向に行くのかな、との懸念もありますが、さほど重要でもなさそうなので気にしなくてよいかな、とやや楽観しています。今回、冒頭で「其南有狗奴國男子為王其官有狗古智卑狗」との『三国志』の一節が引用されていました。前回述べたように、現在の舞台となっている暈の国は後の熊襲と思われますが、鞠智彦という将軍が日見彦たるタケル王を守っているとなると、『三国志』の狗奴国でもあるのでしょう。狗奴国は卑弥呼の勢力圏の南に位置するとされており、卑弥呼は九州北部を勢力圏としているようです。前回述べたように、本作の邪馬台国は宮崎県にあったと設定されているように思われますが、あるいは、途中で奈良県の纏向遺跡一帯に拠点が移り、そこが新たな邪馬台国とされるのかもしれません。いずれにしても、本作の暈の国は後に卑弥呼と対立することになりそうです。

 そうだとすると、モモソが後に卑弥呼(日見子)となる、という前回の予想も修正しなければならないかもしれません。今のところ、ヤノハが洞窟もしくは地下牢で死を待つばかりというような状況からの回想が時々入っていますが、今回のヤノハの企てが後に露見するか、モモソが裏切り、ヤノハはそうした状況に陥っているのかもしれません。もしそうならば、そこからヤノハが他国に逃亡し、モモソとの関わり合いのなかで得た知識を活用して卑弥呼となるか、共に囚われていたヤノハとモモソが逃亡し、モモソが卑弥呼となりヤノハが陰から支える、という展開になるのかもしれません。前回、ヤノハには弟がいたと明かされており、死亡した可能性は高そうですが、もし生きているとすると、『三国志』の記事から推測して、ヤノハが卑弥呼となり、弟が国政を補佐することになるのかもしれません。

 まあ、現時点ではまだ世界観がじょじょに明かされているという段階で、重要人物と思われる暈の国のタケル王も登場していませんから、あまり先のことを推測しても仕方なさそうです。今回、山杜(ヤマト)で祈りを捧げる者が倭国の支配者(倭国王?)になる、と明かされました。ヤマトは古代の日本列島において一般的な地名だったようにも思われますから、現在は暈の国のヤマトを掌握していることが倭国の支配者の証とされているのかもしれませんが、今後、他国のヤマトが倭国支配者の証とされるのかもしれません。

 それはともかく、今回の描写では、日見彦たるタケル王が現在の山杜の支配者のように思われますが、前回の描写と合わせて考えると、天照大御神が降るという日見彦の条件をまだタケル王は満たしていないように思われます。モモソも、日見彦とはタケル王なのか、とのヤノハの問いに明確には答えていませんが、ヤノハはタケル王が日見彦と考えているようです。下層民には一応、タケル王が日見彦と説明されているものの、支配層はタケル王に天照大御神がまだ降っていないことを知っており、それ故に倭国は乱れていると考えている、という設定なのでしょうか。

 そもそも、天照大御神が「降る」とはどういうことなのか、それはどのように認定されるのか、「トンカラリン」という命がけの儀式であることは示唆されているものの、詳細は不明です。もっとも、ここは本作の鍵となりそうですから、すぐには全貌が明かされることはなさそうです。生に執着しているヤノハは、本当に天照大御神が降ったのか否か、といった多数の人々の信念に囚われることはなさそうですから、モモソとの交流を通じて事情を把握するようになると、謀略も用いて、モモソもしくは自分に天照大御神が降った、と人々に納得させるように事を進めていくのかもしれません。まだ始まったばかりで世界観もあまり明かされていない段階なので、推測・予想する余地が大きく、その点での楽しみもあります。まあ、例によって私の予想の多くは外れそうですが。

 上述したように、当分はヤノハとモモソの関係を中心に話が進みそうですが、この二人の個性と関係性も興味深いものです。現時点では、武勇に優れ、生への執着が強く、手段を選ばないヤノハと、まだ具体的にはほとんど示されていないものの、とてつもない才能を秘めていそうで、生には執着しておらず、世間知らずで人並の感情の持ち主のモモソという対照的な人物造形になっているように思われます。現時点では、ヤノハがモモソを思うように操って利用しているように見えますが、モモソも今後、ヤノハのような「怪物」的側面を見せるようになり、両者の関係性も変わってくるのかもしれません。本作は、後の卑弥呼と邪馬台国にどうつながっていくのか、という謎解き要素の点もさることながら、ヤノハとモモソの関係性の推移という点でも楽しめそうです。ともかく、今回も面白く読み進められたので、次回も楽しみです。

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 『ビッグコミックオリジナル』2018年10月20日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハから手を組もうと持ち掛けられたモモソが了承したところで終了しました。今回は、暈(クマ)の国にある「日の巫女」集団の学舎である種智院で、神がかり状態となったモモソが人々の前で神託を告げる場面から始まります。戦部(イクサベ)の者たちの話によると、モモソは祈祷部(イノリベ)の許可を得て前日から東の楼観に籠っていました。戦部の一人が、ついに天照大御神が降ったようだ、と言うと、モモソは神託を告げ始めます。それは古代... ...続きを見る
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2018/10/05 21:53

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