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zoom RSS ヒトパピローマウイルスの進化とホモ属内の交雑

<<   作成日時 : 2018/11/06 17:44   >>

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 ヒトパピローマウイルス(HPV)の進化とホモ属内の交雑に関する研究(Chen et al., 2018)が報道されました。現代人は生涯を通じて多くのパピローマウイルス群(PVs)に感染しますが、そのほとんどは無症状です。しかし、ヒトパピローマウイルス16(HPV16)による持続性感染は、とくに子宮頸部において発癌性が認められています。以前の研究では、HPV16は大きくはA・B・C・Dの4系統に区分され、そのうちA系統に関しては、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のデニソワ人(Denisovan)といった古代型ホモ属との交雑により現生人類(Homo sapiens)が感染し、現代に継承されているのではないか、と推測されていました(関連記事)。

 本論文は、HPV16のうち、212の完全なゲノム配列と3582の部分的な配列を解析し、さらにはHPVのみならず霊長類のPVを対象としてPVsの大規模な系統樹を作成し、HPV16の系統的位置づけ、各系統の推定分岐年代について、より高精細な分析結果を提示しました。PVsは大きく、α・β・γの3系統に区分され、HPV16はα系統に区分されます。αの各系統の最終共通祖先の年代は3990万年前頃と推定されており、霊長類PVsは少なくとも4000万年以上、霊長類宿主と共進化し、宿主たる霊長類に適応していく過程で、宿主への発病性を獲得する系統もあったのではないか、と推測されています。

 以前の研究と同じく本論文も、HPV16を大きくはA・B・C・Dの4系統に区分しています。系統的な関係では、まずA系統とB・C・Dの共通祖先系統が、次にB系統とC・Dの共通祖先系統が、最後にC系統とD系統が分岐しました。A・B・C・Dの4系統はそれぞれ、さらに4系統に区分されます(A1〜4など)。本論文は現代人を、アジア系・ヨーロッパ系(Caucasians)・アフリカ系・ラテンアメリカ系に分類し、各地域系統間の違いがよく反映される分類として、HPV16の系統をA1-3・A4・B・C・Dに区分しています。アフリカ系は、A1-3が2.4%、A4が0%、Bが54.2%、Cが36.1%、Dが7.2%です。ヨーロッパ系は、A1-3が83.0%、A4が1.4%、Bが4.0%、Cが1.6%、Dが11.0%です。アジア系は、A1-3が62.0%、A4が29.9%、Bが0.2%、Cが1.6%、Dが6.3%です。ラテンアメリカ系は、A1-3が49.5%、A4が0%、Bが0.5%、Cが1.7%、Dが48.3%です。

 A4の約99%はアジア系で、アフリカ系ではA系統がほとんどなく、ラテンアメリカ系ではD系統が他地域よりもはるかに多くなっており、4地域の構成はかなり異なっています。B・C系統がアフリカ外ではひじょうに少ないことも注目されます。こうした地理的な構成の違いと、全体的にB・C・D系統はA系統よりゲノム多様性が高いことと、A系統とB・C・Dの共通祖先系統との推定分岐年代は、489000年前頃で、現生人類の祖先系統とネアンデルタール人およびデニソワ人の共通祖先系統との推定分岐年代に近いことから、A系統はネアンデルタール人から現生人類へと交雑によりもたらされ、B・C・D系統はアフリカ起源だろう、と本論文は推測しています。もっとも、現生人類の祖先系統とネアンデルタール人およびデニソワ人の共通祖先系統との推定分岐年代については諸説あり、まだ確定したとは言えない状況で、50万年前頃よりもずっとさかのぼるのではないか、と私は考えています(関連記事)。

 A系統のうちA4系統の分布はかなり特異で、約99%はアジア系で見られます。以前の研究を当ブログで取り上げた時は、A4系統はデニソワ人に由来するのではないか、と推測しましたが(関連記事)、本論文は、とくに東アジア系現代人で高頻度のA4系統はネアンデルタール人系統で進化し、アジアにおける現生人類との交雑により現生人類へと感染したのではないか、との見解を提示しています。つまり、アジア系とヨーロッパ系が分岐した後に、アジア系はさらにネアンデルタール人と交雑した、というわけです(関連記事)。A系統は、まずA1-3系統とA4系統とで分岐し、その推定年代は173000年前頃で、ネアンデルタール人とデニソワ人の分岐は遅くとも45万年前頃よりもさかのぼると考えられますから、現代人に見られるA4系統がネアンデルタール人由来である可能性は高いと思います。PVは基本的に骨格には感染しないので、ネアンデルタール人とデニソワ人のゲノムではHPVは確認されていません。したがって、本論文の見解は断定的ではないのですが、信頼性は高いと思います。

 なお、ラテンアメリカ系におけるD系統の割合の高さについては、ボトルネック(瓶首効果)の可能性も、アフリカからD系統の比率の高い遺伝学的に未知の集団がラテンアメリカへと渡った可能性も想定されていますが、確定的ではない、と指摘されています。さらに対象集団を拡大することで、この問題の手がかりが得られる可能性は高いでしょうから、今後の研究の進展が期待されます。ウイルスの進化と人類の進化を関連づける研究は以前よりありましたが、解析技術の発達により、この分野は飛躍的に発展しています。何とか少しでも、最新の研究動向を追いかけて、当ブログで取り上げていきたいものです。


参考文献:
Chen Z, DeSalle R, Schiffman M, Herrero R, Wood CE, Ruiz JC, et al. (2018) Niche adaptation and viral transmission of human papillomaviruses from archaic hominins to modern humans. PLoS Pathog 14(11): e1007352.
https://doi.org/10.1371/journal.ppat.1007352

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