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zoom RSS アルタイ地域の中部旧石器時代〜上部旧石器時代

<<   作成日時 : 2018/11/02 18:53   >>

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 アルタイ地域の中部旧石器時代〜上部旧石器時代への移行期に関する研究(Krivoshapkin et al., 2018)が公表されました。南シベリアのアルタイ地域は、近年になってホモ属の進化史において注目されるようになりました。それは、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)という以前から知られていたホモ属系統のみならず、種区分未定のデニソワ人(Denisovan)という新たなホモ属系統も存在していた、と明らかになったからです(関連記事)。デニソワ人はアルタイ地域のデニソワ洞窟(Denisova Cave)でのみ確認されています。

 本論文は、アルタイ地域の中部旧石器時代のインダストリーを、デニソワン(Denisovan)、カラボム(Kara-Bom)、シビリャチーハ(Sibiryachikha)の三つに区分しています。このうち、デニソワンとカラボムに関しては、上部旧石器時代への地域的な連続性が指摘されています。本論文は、アルタイ地域の旧石器時代研究を長年にわたって牽引してきた、デレヴャンコ(Anatoly Panteleevich Derevianko)氏の仮説に依拠しており(関連記事)、デニソワ人から解剖学的現代人(現生人類)への進化すら想定されています。

 本論文は、アルタイ地域における中部旧石器時代〜上部旧石器時代への移行期に関して、デニソワ洞窟よりもやや西方にあるストラシュナヤ洞窟(Strashnaya Cave)の発掘成果を報告しています。ストラシュナヤ洞窟は第1層〜第13層まで確認されており、このうち第1層と第2層が完新世、第3層以降が更新世となります。更新世の層は、上部旧石器時代が第3層、中部旧石器時代が第4〜10層となります。第3層の最上部は層位31aで、酸素同位体ステージ(OIS)2(29000〜14000年前頃)に相当します。第3層の最下部は層位31b・33で、OIS3(57000〜29000年前頃)に相当します。第4層と第5層も放射性炭素年代測定法ではOIS3に相当しますが、第4層と第5層より新しいはずの第3層最下部との年代の逆転も見られ、齧歯類による攪乱があったのではないか、と推測されています。現在、こうした年代の不一致を解消するため、光刺激ルミネッセンス法(OSL)による年代測定の準備が進められているそうです。

 第4層〜10層では3862個の中部旧石器時代の石器群が発見されており、大きな打撃打面を伴う薄い剥片が優占しており、尖頭器と剥片の製作にはルヴァロワ技術が用いられました。これら中部旧石器時代石器群のいくつかには、石刃製作の特徴も指摘されています。尖頭器には再加工の痕跡も確認されています。

 上部旧石器時代の石器群には石刃および細石刃の角柱状石核が見られ、いくつかの放射状およびルヴァロワ石核も含まれています。道具一式は掻器や再加工された石刃や削器などが確認されています。層位31 a・31b・33では、アカシカの枝角など骨から作られた、装飾品(ペンダントやボタンのようなもの)や針や突きぎりや狩猟用武器の断片といった骨器が発見されています。また、化石軟体動物の殻の装飾品も数点発見されています。層位31aでは解剖学的現代人の歯が8個発見されており、7〜9歳の1個体のものと推測されています。この解剖学的現代人の歯は、マルタ(Malta)やリストヴェンカ(Listvenka)やアフォントヴァゴラ(Afontova Gora)といったシベリアの上部旧石器時代の各遺跡の人類遺骸との類似性を示す一方で、現代のアメリカ大陸先住民との形態学的特徴も共有しています。

 本論文は、ストラシュナヤ洞窟の第3層(層位31 a・31b・33)には異なる3段階の文化が存在した、と指摘します。層位33はルヴァロワ剥片技術により示される第一段階のデニソワンで、いくつかの石刃石核や上部旧石器時代的な道具や装飾品や骨器を伴っています。中部旧石器時代のインダストリーにも関わらず、上部旧石器時代的要素が見られるというわけですが、攪乱が見られる、との指摘が気になるところです。第二段階は層位31bで、年代は47000年前(本論文では明示されていませんがおそらくは非較正)となり、カラボム遺跡で見られる早期上部旧石器時代的文化です。第三段階は層位31aで年代は22000年前となり、細石刃技術・個人的装飾品・骨器を伴う発展した上部旧石器を表します。完全に上部旧石器時代のインダストリーと言えるでしょう。これまで、アカシカの切歯のペンダントのような骨の装飾品と針は、中部旧石器時代〜上部旧石器時代の移行期のアルタイ地域において、デニソワ洞窟においてのみ確認されていましたが、ストラシュナヤ洞窟の遺物群が新たに加わったことになります。本論文は、ストラシュナヤ洞窟の遺物群は、アルタイ地域における「現代的行動」への新たな証拠になる、とその意義を指摘しています。

 カラボム遺跡では上部旧石器時代以降に顕著となる「現代的行動」が確認されており(関連記事)、ストラシュナヤ洞窟でも類似文化が見られます。このように南シベリアにおいて上部旧石器的文化が定着していくなかで、そのなかに中部旧石器のムステリアン様相の強い石器群が存在することも指摘されています。それはシビリャチーハ(シビリチーハ)インダストリーです。比較的狭い領域内に中部旧石器的要素の強い石器群と上部旧石器初頭の石器群が「共存」していた状況の解釈として、場の機能の違いによるとする見解と、異なる人類集団の共存を想定する見解があります。デレヴャンコ説では後者が採用されており、上部旧石器の担い手は現生人類で、シビリャチーハ・インダストリーの担い手はネアンデルタール人と想定されています(関連記事)。


参考文献:
Krivoshapkin A. et al.(2018): Between Denisovans and Neanderthals: Strashnaya Cave in the Altai Mountains. Antiquity, 96, 365, e1.
https://doi.org/10.15184/aqy.2018.221

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