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zoom RSS デニソワ洞窟の新たな装飾品

<<   作成日時 : 2018/12/08 20:30   >>

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 更新世の人類遺骸が発見されていることで有名な、南シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)で新たに装飾品が発見された、と報道されました。デニソワ洞窟では、種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)やネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の遺骸が発見されており、そのDNA解析は大きな注目を集めました。デニソワ人については、以前当ブログでまとめました(関連記事)。

 デニソワ洞窟では今年(2018年)の夏に装飾品が発見されました。研究者はこれをティアラと呼んでいるようです。このティアラはマンモスの牙製で、摩耗していることから、毛髪が目にかからないようにするなど実際に使用され、またそのサイズから女性ではなく男性が使用していた、と推測されています。ティアラの丸い端には穴があり、紐のようなものが通されていたのではないか、と推測されています。このティアラは、まず水に浸けられて亀裂を生じずに延性が増し、それから曲げられた、と推測されています。デニソワ洞窟では以前に、マンモスの牙製のティアラ(と思われる装飾品)の前方部分が発見されていました。またデニソワ洞窟では、リングやブレスレットのような装飾品も発見されています。

 上記報道では、この新たに発見されたティアラがどの層から発見されたのか、よく分からなかったのですが、おそらく暫定的な年代として、50000〜45000年前頃という推定値が挙げられているので、デニソワ人の遺骸でも新しい方のデニソワ4(Denisova 4)やデニソワ3の発見された層の近くではないか、と思います。デニソワ3とデニソワ4は近い年代(3700〜6900年の違い)と推定されています(関連記事)。これらの新しい方のデニソワ人遺骸と同じ層では、上述したブレスレットなど装飾品と思われる遺物が発見されています。問題となるのは、新たに発見されたティアラも含めて、これらの装飾品の正確な年代です。ティアラについては、マンモスの牙製なので、その直接的な年代はマンモスの死亡時のものであり、ティアラに加工された年代はずっと後だった可能性があります。上記報道では、発見された層の年代を正確に測定することが必要だ、と指摘されています。

 ただ、デニソワ洞窟で発見されたこれらの装飾品のより正確な年代がいつであれ、興味深い問題を提起することになりそうです。シベリアのサハ共和国のヤナ川流域ではマンモスの牙製のティアラが発見されていますが、これは現生人類(Homo sapiens)の所産で、年代は28000〜20000年前頃と推定されています。デニソワ洞窟のティアラの年代が50000〜45000年前頃だとすると、製作者が現生人類である可能性はじゅうぶん想定されます。デニソワ洞窟では多数のマンモスの牙の断片が発見されているので、ティアラはデニソワ洞窟で製作された、と考えられます。そうすると、現生人類がデニソワ洞窟を訪れてティアラを製作し、デニソワ人と一時的に共存していた可能性すら想定されます。もちろん、旧石器時代考古学的にはほぼ同年代としても、じっさいにはデニソワ人と現生人類が数十年単位で相互に利用しただけで、デニソワ洞窟での両者の接触はなかったのかもしれません。

 ただ、デニソワ洞窟でデニソワ人が発見された層では現生人類の遺骸が発見されておらず、デニソワ洞窟の研究に関わっているフェドルチェンコ(Alexander Fedorchenko)氏は、現生人類ではない人類によるティアラ製作の可能性を指摘しています。そうすると、発見された層からも、デニソワ人がティアラを含む装飾品を製作した、と考えるのが節約的です。しかし、この仮説は新たな問題を提起します。ティアラ製作に用いられた技法は現生人類特有と考えられてきましたし、デニソワ洞窟では針と思われる遺物さえ発見されています。これらが現生人類ではなくデニソワ人の製作だとすると、人類史を大きく書き換えることになります。

 デニソワ3については、クロアチアのネアンデルタール人の高品質なゲノム配列との比較から、72000年前頃と推定されています(関連記事)。そうだとすると、デニソワ洞窟の装飾品の年代は72000〜65000年前頃となりそうで、現生人類の関与を想定するにはやや古いようにも思えます。しかし、これはあくまでも遺伝学的な推定年代ですし、仮にこの年代が妥当だとしても、すでにアルタイ山脈にまで現生人類が拡散していた可能性は、それなりにあるように思います。これらの装飾品が後世の嵌入である可能性は、デニソワ洞窟の装飾品を報告した論文(Derevianko et al., 2008)をざっと読んだ限りでは、低そうに思います。デニソワ洞窟の更新世の装飾品については、年代がいつであれ、議論を呼ぶことになりそうです。


参考文献:
Derevianko AP, Shunkov MV, and Volkov PV.(2008): A PALEOLITHIC BRACELET FROM DENISOVA CAVE. Archaeology, Ethnology and Anthropology of Eurasia, 34, 2, 13–25.
https://doi.org/10.1016/j.aeae.2008.07.002

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