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zoom RSS Y染色体から推測されるアメリカ大陸への人類最初の拡散

<<   作成日時 : 2018/12/25 03:41   >>

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 Y染色体から推測されるアメリカ大陸への人類の拡散した研究(Pinotti et al., 2019)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。近年では、人類はアメリカ大陸に進出する前に、28000〜18000年前頃の最終最大氷期を含む寒冷期に、ベーリンジアに孤立した状態で1万年程度留まっていた、とするベーリンジア停止(潜伏)モデルが有力説になっています(関連記事)。本論文は、アメリカ大陸およびユーラシア大陸の現代人と古代人のY染色体DNAの新たな配列および既知の配列を比較し、各ハプログループの分岐年代と地理的分布から、アメリカ大陸への人類最初の拡散を検証しています。

 本論文はアメリカ大陸先住民集団のY染色体ハプログループを、大きく4系統に区分しています。C系統では南アメリカ大陸で稀なC3-MPB373と北アメリカ大陸のC3-P39/Z30536で、Q系統ではアメリカ大陸全域で高頻度のQ-M3とそれよりは低頻度のQ-CTS1780です。C3-MPB373系統とC3-P39/Z30536系統(の祖型)との推定分岐年代は24400〜19100(21600)年前で、Q-M3系統とQ-CTS1780系統との推定分岐年代は21300〜16700(18900)年前です。

 注目されるのは、ヨーロッパ北西部で4個体が確認されているQ-L804系統とアメリカ大陸で高頻度のQ-M3系統が、祖型のQ-M930系統から19500〜15200(17300)年前頃に分岐した、と推定されていることです。本論文は、アメリカ大陸に最初に拡散した人類集団の祖先集団がベーリンジアで一定期間孤立していたことを前提とすると、南下してのアメリカ大陸への拡散はどんなに早くても19500年前頃以降になるだろう、と推測します。

 また、19500年前頃以降にアメリカ大陸先住民集団の祖先集団のベーリンジアでの孤立が始まった、とも考えられます。ベーリンジアでの孤立は、Q-M930系統の祖型のQ-L154系統が21400〜16700(18900)年前頃にシベリアのQ-L330系統とアメリカ大陸先住民集団のQ-CTS1780系統とに分岐し、Q-L154系統はその前に南アジアで見られるQ-B28系統と分岐していることから、21400年前頃もしくは19500年前頃に始まったのではないか、と本論文は推定しています。Q-CTS1780系統のアメリカ大陸への拡散は、他の系統と分離していたかもしれない、と本論文は指摘しています。

 また、Q-M 3系統がQ-M 848系統とQ-Y4308系統に分岐した後、Q-M 848系統がアメリカ大陸全域で多様に分岐していくのが16800〜13100(14900)年前頃であることから、本論文は、ベーリンジアでの孤立期間は16800年前頃には終わったのではないか、と推定しています。つまり、ベーリンジアでの孤立は、じゅうらいの推定の10000年間ほど長くはなく、4600年間もしくは2700年間と短かったのではないか、というわけです。本論文は、シベリアのQ-L330系統やヨーロッパ北西部のQ-L804系統は、ユーラシアからベーリンジアへと拡散した後、ユーラシアへと「戻った」系統かもしれない、と指摘しています。

 上述したように、Q-M 848系統がアメリカ大陸全域で多様に分岐していくのが16800〜13100(14900)年前頃で、12000年前頃までには、とくに南アメリカ大陸の広範な地域で、多様に系統が分岐していった、と推測されます。これは、南アメリカ大陸への急速な拡散を示唆し、これまでの研究で想定されていたように、本論文でも、アメリカ大陸の最初期の人類集団はアメリカ大陸西岸を急速に南下していった、と推測しています。また、アメリカ大陸において12000年前頃までに多様なY染色体系統が確立していたことは、同時代の北アメリカ大陸のクローヴィス(Clovis)文化が比較的均一なのに対して、南アメリカ大陸では多様な文化が見られる、とする考古学的知見とも整合的だ、と指摘されています。本論文の知見はY染色体に基づいていますが、核DNAや考古学の知見とも大きく矛盾しているわけではなさそうで、注目される研究だと思います。


参考文献:
Pinotti T. et al.(2019): Y Chromosome Sequences Reveal a Short Beringian Standstill, Rapid Expansion, and early Population structure of Native American Founders. Current Biology, 29, 1, 149–157.E3.
https://doi.org/10.1016/j.cub.2018.11.029

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