森茂暁『戦争の日本史8 南北朝の動乱』

 吉川弘文館より2007年9月に刊行されました。「南北朝」と題した一般向け書籍の叙述範囲をどこまでとするかという問題は、著者の歴史観も表れていて興味深いと思います。本書は、鎌倉時代後期の情勢や足利義持・義教が室町殿だった時代にも言及していますが、基本的には正中の変から南北朝の合一までを扱っています。南北朝時代の通史としては基本的な時代区分と言えそうです。本書は、南北朝時代を日本史上初の未曾有の大転換期だと指摘しています。それは、政治・経済・思想・文化の各方面における変革だった、というのが本書の見解です。

 本書は、観応の擾乱も含めて南北朝の騒乱を急進派対保守派という概念で把握し、騒乱が大規模化・長期化した要因としています。たとえば、高師直は急進派で足利直義は保守派(守旧派)というわけです。こう明確に区分すると確かに分かりやすいというか鮮やかではあるのですが、そのように割り切れるものなのか、疑問も残ります。この時代の宗教・文化・対外関係のみならず、近代における南北朝時代についての歴史認識とその影響も取り上げられています。大日本帝国の理念と南朝の王権至上主義とは酷似しており、それは北朝の後裔にも関わらず明治天皇が南朝を正統とみなしたことと無関係ではないだろう、との指摘は興味深いと思います。

 本書を読んでこの記事を執筆したのはかなり前のことで、はっきりと記憶していませんが、10年近く経過しているかもしれません。高師直を急進派、足利直義を保守派(守旧派)と区分する本書の見解に関しては、当時からやや疑問を抱いていたのですが、この問題に関してはその後、亀田俊和『高師直 室町新秩序の創造者』(関連記事)や亀田俊和『観応の擾乱 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い』(関連記事)が刊行されており、参考になると思います。

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