ベネズエラの現状に関する言説補足

 最近、ベネズエラの現状と関連する言説を取り上げ、ベネズエラの反政府デモ参加者や野党政治家たちを、主体性のないアメリカ資本の人質のように見なしているのは、根底にベネズエラ、さらにはベネズエラに限らず民衆への蔑視があるからだろう、と述べましたが(関連記事)、その後まとめ記事などを読み、色々と考えさせられるところがあったので、少し補足しておきます。とはいっても、私はベネズエラ情勢に詳しくないので、一般論にとどめます。

 自分の政治信条や世界観・価値観に反したり都合が悪かったりする事象・勢力に対して、自分が敵視したり嫌ったりしている勢力の「陰謀」や「工作」を主張する現象は、人間社会において珍しくありません。じっさい、「陰謀」や「工作」はありふれているわけで、そうした主張のすべてが荒唐無稽ではありません。交通および情報伝達手段が著しく発達し、経済関係が密接になった現在、大国(に限りませんが)が世界各地域で影響力を強化しようとして諸勢力と関係を有し、そうした諸勢力が大国の思惑を利用して自国・近隣地域で勢力を拡大しようとすることは日常的です。外国の特定勢力に対する好意的な報道(偏向報道とも言えます)や直接的な接触・支援などは、ほとんどの国がやっていることでしょう。

 しかし、ある勢力が「外部」勢力と関係を有しているとか支援を受けているとかいったことを根拠に、ただちにその勢力が「卑劣」だとか「売国奴」だとかいった印象を強調し、罵倒するような言説は問題です。たとえば、ある抗議行動の主体勢力に「外部」勢力の「陰謀」や「工作」があったとして、それを「外部」勢力の手先などと言って批判・罵倒・嘲笑するのは、あまりにもその勢力の主体性を無視し、愚弄したものだと思います。「非対称性」を根拠に、「大国」に利用され翻弄されるだけの「小国(勢力)」と強調する言説には慎重になるべきだと思います(そうした側面が多分にあることは否定できませんが)。

 よく指弾されるアメリカ合衆国(以下、米国と省略)が「介入」して「支援」した事例にしても、各勢力による米国の利用という側面が多分にあり、後に米国にとって不都合な事態となったことは少なくありません。タリバンはその好例でしょうし、イラクのフセイン政権についても同様のことが言えます。ウクライナの「オレンジ革命」にしても、ウクライナ国内の一方の勢力による米国や西ヨーロッパ勢力の利用という側面が多分にあり、米国の「支援」を受けた勢力によるその後の「失政」まで米国の当初からの意図と言ったり、米国に大きな責任を負わせたりするのは、あまりにもウクライナの人々の主体性を無視した議論だと思います。

 ベネズエラについても同様ですが、こうした一部?の「リベラル」や「左翼」の視線は、「大国」以外の人々を無力で愚かな人々とみなしている点で(もちろん彼らの主観では違うわけですが)、彼らが批判してやまない「帝国主義者」の心性そのものだと思います。ベネズエラの反政府デモ参加者や野党政治家たちを米国政府・資本の傀儡と罵倒することと、「リベラル」や「左翼」が嫌悪・嘲笑しているだろう「ネトウヨ」(の大半?)による、沖縄の反基地運動にたいする中国や韓国(の進歩派)の手先との罵倒は、「外部」勢力の「関与」の度合いに大きな違いがあったとしても、本質的に同様の思考過程・心性だと私は考えています。私も嫌いな思想・勢力にはつい厳しい視線を向けてしまいますし、偏向した情報でも都合がよければ採用してしまう危険性はもちろんありますから、自戒せねばなりません。

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