地上波版より分かりやすかったBS版『生命大躍進』第3集「ついに“知性”が生まれた」

 4年前(2015年)にNHKスペシャルとして地上波で放送された『生命大躍進』がBS4Kで放送されたので、録画して視聴しました。BS版は基本的に地上波版と内容は変わらないと思いますが、やや放送時間が長いことと、芸能人の小芝居がないことから、地上波版では省略された解説もあります。このようなドキュメンタリー番組に芸能人が出演して小芝居をすることに私は昔から否定的で、『生命大躍進』第3集では地上波版で省略された重要な情報も解説されたことから、ますます批判的になりました。ただ、『生命大躍進』の出演者はガッキーだったので、つい小芝居を楽しみに見てしまいました。そんなことではいけない、とは思うのですが、凡人なのでつい評価が感情に左右されてしまいます。

 それはさておき、『生命大躍進』第3集(関連記事)BS版と地上波版の違いですが、地上波版では言及されなかったネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)との交雑が、BS版では取り上げられていました。昨年放送されたNHKスペシャル『人類誕生』第2集「最強ライバルとの出会い そして別れ」では両者の交雑が取り上げられていたものの、それまでのNHKスペシャルでは両者の交雑が言及されておらず、かなり偏っているというか、頑なな態度だという印象を私は視聴時に受けました(関連記事)。もちろん、何らかの明確な理由があるとか、省略してもとくに解説に支障がないとかならば、仕方のないところかもしれません。しかし、『生命大躍進』第3集の場合、ネアンデルタール人と現生人類との「知性」の違いの一因となり得る要素の解説として、重要な役割を担っていたように思うので、省略には疑問の残るところです。

 地上波版では、ネアンデルタール人と現生人類との「知性」の違い一因として、FOXP2遺伝子の発現に変化をもたらすような変異が挙げられ、やや詳しく解説されていました。FOXP2遺伝子は発話能力に関与している、と考えられているので(BS版第3集では学習能力との関連も指摘されていました)、ネアンデルタール人と現生人類との「知性」の違いの要因として、以前より有力な候補とされてきました。その意味で、FOXP2遺伝子への注目は説得的なのですが、BS版は、ネアンデルタール人と現生人類との交雑について言及し、現代人のゲノムにおいて、FOXP2遺伝子を取り囲んでいる膨大なゲノム領域では、現代人のそれにネアンデルタール人由来のそれが見られない、との研究(関連記事)を取り上げることで、FOXP2遺伝子がネアンデルタール人と現生人類との「知性」の違いにおいてなぜ注目されるのか、より説得力のある解説になっていたと思います。

 FOXP2遺伝子の周辺領域の違いがFOXP2遺伝子の発現に影響を及ぼし、その具体的な効果はまだ不明としても、FOXP2遺伝子とその周辺領域に関しては、現代人にネアンデルタール人由来のものが見当たらないとなると、「ネアンデルタール人型」は「現生人類型」と比較して適応度が明らかに低く、排除されたのだ、との推測は妥当なものです。そこから、ネアンデルタール人は現生人類と比較して発話能力や学習能力が低く、それが現生人類との競合で絶滅した(より正確には、ネアンデルタール人の形態的・遺伝的特徴を一括して有する集団は現在では存在しない、と言うべきかもしれません)要因になった、との推測も一定以上の説得力があるとは思います。もちろん、そうした見解が本当に正しいのかは、さらなる検証が必要です。最近では、ネアンデルタール人と現生人類との認知能力の大きな違いの重要な根拠とされてきた壁画についても、ネアンデルタール人が描いていた、との見解も提示されており(関連記事)、ネアンデルタール人と現生人類の認知能力の違いは、1990年代後半~2000年代に想定されていたほど大きくはないかもしれません。

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