現代人系統の染色体数はいつ46本になったのか

 現代人(Homo sapiens)も含む現生大型類人猿というかヒト科は、現代人を除いて48本(24対)の染色体を有しています。つまり、オランウータンもゴリラもチンパンジーも染色体数が48本なのにたいして、現代人の染色体数は46本(23対)です。まず、現代人・チンパンジー・ゴリラ・オランウータンの最終共通祖先からオランウータン系統が分岐しました。次に、現代人・チンパンジー・ゴリラの最終共通祖先から現代人・チンパンジーの共通祖先系統とゴリラの祖先系統が分岐しました。次に現代人・チンパンジーの最終共通祖先から現代人の祖先系統とチンパンジーの祖先系統が分岐しました。

 この分岐順から推測すると、現代人・チンパンジー・ゴリラ・オランウータンの最終共通祖先の染色体数は48本だった可能性がきわめて高い、と言えるでしょう。現代人・チンパンジー・ゴリラの最終共通祖先も、現代人・チンパンジーの最終共通祖先も、同様に染色体数は48本だった可能性がきわめて高いでしょう。そうすると問題になるのは、現代人系統において染色体数が46本になったのは、チンパンジー系統から分岐した後、いつだったのか、ということです。

 この問題に関しては、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類との生殖隔離との観点から説明しようとする人が少なくなかったようです(関連記事)。かつて、ネアンデルタール人と現生人類との交雑はなかった、との見解が圧倒的に優勢だった時期(1997~2010年4月頃)には、その理由としてさまざまな見解が提唱されました。その一つが、両者の染色体数は異なっていたので、現代人にはネアンデルタール人の遺伝的痕跡が残っていないのだ、というような説明でした。つまり、染色体数が46本になったのは、ネアンデルタール人系統と分岐した後の現代人系統においてだった、というわけです。

 この問題で参考になるのが、そもそもなぜ現代人の染色体数は46本(23対)になったのか、ということです。現代人と最近縁の現存生物であるチンパンジーとの比較から、チンパンジーでは2A・2Bと2本になっている染色体が、現代人では2番染色体1本に融合している、と推測されています。この融合により、現代人の2番染色体には独特な反復配列が見られます。種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)の高品質なゲノム配列(関連記事)においても、チンパンジー(Pan troglodytes)とボノボ(Pan paniscus)で見られないこの反復配列が特定されたため、デニソワ人の染色体数も46本だった可能性がきわめて高い、と言えるでしょう。

 後期ホモ属においては、まず現代人系統とネアンデルタール人およびデニソワ人の共通祖先系統が分岐し、その後にネアンデルタール人系統とデニソワ人系統が分岐した、と推測されています(関連記事)。そのため、ネアンデルタール人、さらには現代人・ネアンデルタール人・デニソワ人の最終共通祖先の染色体数も46本だった可能性がきわめて高い、と言えるでしょう。そうすると問題となるのは、現代人系統において染色体数が48本から46本になったのはいつなのか、ということです。それはホモ属出現以降かもしれませんし、あるいはアウストラロピテクス属やそれ以前のことかもしれません。この問題の解決は困難かもしれませんが、いずれにしても、現代人系統はチンパンジー系統と分岐した後、ネアンデルタール人およびデニソワ人の共通祖先系統と分岐する前に、染色体数が48本から46本に減った可能性がきわめて高そうです。

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