ジャワ島におけるメガントロプスの存在

 アジア南東部における更新世ヒト科の多様性に関する研究(Zanolli et al., 2019)が報道されました。ジャワ島では、前期~中期更新世のヒト科の歯や顎が200点以上発見されています。これらの大半は、現在ではホモ・エレクトス(Homo erectus)に分類されています(関連記事)。しかし、これらの標本にはかなりの多様性があり、かつては、部分的な下顎サンギラン5(Sangiran 5)を正基準標本とするメガントロプス・パレオジャワニカス(Meganthropus palaeojavanicus)や、サンギラン6a(Sangiran 6a)を正基準標本とするピテカントロプス・デュビウス(Pithecanthropus dubius)といった別の属が設定されていました。

 本論文は、これらの標本を顕微鏡断層撮影法によるさまざまな形態測定手法で、EDJ(象牙質とエナメル質の接合部)などを再分析しました。その結果、ホモ・エレクトス(Homo erectus)やメガントロプス・パレオジャワニカスやピテカントロプス・デュビウスに分類されていたものを含む複数の標本(Trinil 11620、Trinil 11621、Sangiran 5、Sangiran 6a、Arjuna 9、FS-77、SMF-8864)は、前期~中期更新世のアジア南東部における存在が確認されていたホモ属でもオランウータン属でもギガントピテクス属でもない、中新世からアジア南東部に存在してきた新たなヒト科系統として分類される、と本論文は指摘します。本論文はこの新たな系統を、かつての分類を用いてメガントロプス・パレオジャワニカスと命名しました。かつて設定されていたピテカントロプス・デュビウスという分類は、本論文ではメガントロプス・パレオジャワニカスと同義となります。

 本論文の見解が妥当ならば、アジア南東部では、以前の想定よりも多様なヒト科が存在していたことになります。メガントロプス属の歯の摩耗パターンは、化石および現生オランウータン属と類似しており、おもに地上の果物や他の植物を食べていた、と推測されています。一方、ホモ・エレクトスの食性は柔軟だった、と推測されています。したがって、メガントロプス属はオランウータン属と採食行動のかなりの側面で競合していた可能性があります。また、ホモ・エレクトスとの競合も想定されます。ただ、メガントロプス属は中期更新世までには絶滅したと推測されますが、その理由が、ホモ属やオランウータン属やギガントピテクス属との競合なのか、環境変動なのか、それらも含む複合的要因なのか、現時点では不明です。


参考文献:
Zanolli C. et al.(2019): Evidence for increased hominid diversity in the Early to Middle Pleistocene of Indonesia. Nature Ecology & Evolution, 3, 5, 755–764.
https://doi.org/10.1038/s41559-019-0860-z

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